まるで生きているみたい…! 一針、一針心を込めて…羊毛フェルトで小動物を作る人びと
最近、SNSなどで小さな動物を手に載せたり、ポケットに入れていたりする画像を見るようになりました。しかしそれがどう見ても、実際のサイズより小さすぎる気も…。よくよく画像を眺めたり、添えられているテキストを読むと「ニードルフェルト」と呼ばれる羊毛フェルトを使用した手づくりのぬいぐるみらしいのです。試しに画像検索窓に「ニードルフェルト」と入れてみると、イヌやネコような身近な動物から、リスやシロクマ、そしてウーパールーパーまで、ふわふわもこもこの姿になった画像がつぎつぎ出てきます。SNSなどにアップしている人もおり、特に人目を惹く作品にはたくさんの「いいね」が寄せられ、人気を集めているようです。いったいどんな人たちが、どんな思いで作っているのでしょうか…?
あらためてご説明すると「ニードルフェルト」とは専用のニードル(針)で羊毛を刺し、繊維を針先のギザギザで絡み合わせて成形(フェルト化)していく手芸です。動物の小さな手足や愛らしい表情など、精巧なつくりを見ていると、制作には熟達の技術と相当の時間が必要だと感じます。今回は通販会社「フェリシモ」にて初心者向けのニードルフェルト・キットの監修を担当するほか、展示販売会やワークショップで活躍中の羊毛フェルト作家「cotocoto felt works」の児玉彩さんにその魅力と、生徒さん達は完成した作品をその後どうしているのか、などを聞きました。
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-どのようなきっかけでニードルフェルト制作を始められましたか。
「元々大学で美術を学んでおり、織物の授業で羊毛フェルトの存在を知りました。友人がニードルで刺して人形を作っているのを見て興味を持ち、自分でも初めてニードルフェルトで制作した置物を作りました。本格的に活動を開始したのは、2011年の秋頃からです。2013年ごろ、初めて小さなワークショップを開催しました。その後、カルチャーセンターで講師を4年ほど勤め、現在は都内近郊の色々な場所で、ワークショップの講師をさせていただいています」
-ニードルフェルトの魅力とは?
「ニードルフェルトは自由自在に形が作れます。慣れてくると、『毛糸』『スカードウール』などの素材を植毛することで、よりバリエーション豊かに動物の毛並みを表現することができます。さらに上達すると、しっぽや脚の部分に針金を入れ、そのパーツを組み合わせ、脚で自立する動物を作ることもできるんです。素材を組み合わて色々な表現ができることが楽しく、一度作り始めてからは取り憑かれたように色々と作りました」
-初心者だと、どのくらいで1体作れるようになりますか。
「丸っこい単純な形の作品ですと数時間集中することができれば、完成すると思います。ただ凝ったものを作る場合は、ご自身がどこまで完成度を追及なさるかによると思うので推察するのは難しいのですが、数日から何週間程かかるかもしれません」
-やはり初心者は技術の習得だけでも時間がかかるんですね。生徒さんにはどんな人たちが多いですか?
「ほとんどが女性で、ごくたまに男性がお1人でいらっしゃったり、ご夫婦でご参加くださる方も。年齢層は小学生から60代くらいまで幅広いですが、30~50代のOLさんや主婦さんが一番多いように感じています」
-どんな動機から作ろう、と思うのでしょうか?
「きっと様々な理由やきっかけがあると思うのですが、生徒さんのお話を聞いていると、亡くなったペットさんの人形を作りたい方や、私のメーン作品となるげっ歯目の作り方を学びたいなど、作りたいもの(目的)が明確な方や、手を動かすことがお好きで、集中してチクチクサクサクと羊毛を刺し固めていく工程やふわふわの毛の手触り等、羊毛と戯れる時間そのものを楽しんでいらっしゃる方もいらっしゃるように思います。時間をかけて製作した動物たちは、その方にしか出せない表情や雰囲気をまとっていて、そんな我が子たちが完成した時のなんとも言えない達成感もまた魅力なのかもしれません」
-作品は、皆さんどうされていますか?
「生徒さんのほとんどは、完成した我が子に特別な愛着がおありになるようで、ご自宅に作品たちを並べて飾っていらっしゃったり、お仕事のデスクにちょこんと飾っていらっしゃったり、ご自身の手元に残される方が多いように思います。教室で習った動物を、ご自宅でプレゼント用に2匹目を製作されたり、どうしても欲しいとお子様や姪っ子甥っ子さんにねだられて奪われたので(笑)もう1匹自分用に新しい子を作りましたというエピソードも伺います」
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また児玉さんはフェリシモの「おはなしが聞こえてきそう♪ ニードルフェルトで作る動物たち『はじめてさんのきほんのき』の会」監修も担当。全6回で基本から学び、初心者でも半年かけて自立するシマリスを作れるようになるのを目指す内容です。このキットで学んだ方たちの修了後のコメントも聞いてみました。
「初心者ですが、自分が思っている以上に形になっていくことが、とてもうれしい(40代女性)」「ステップアップしていくごとに、だんだんとかわいく作れるようになりました。どの動物さんもとてもかわいくて満足しています!(20代女性)」など、まるで本物の生命があるかのような姿を、自分の手で作る喜びが、創作の原動力なのかな、と感じました。ご興味のある人はぜひ冬の夜長に挑戦してみては。春を迎えるころには、可愛い手のひらサイズのお友達ができているかもしれません。
(まいどなニュース特約・山本 明)