ダンボール箱に捨てられていた4匹の子猫の行方…発見者の迅速な行動で九死に一生

 ダンボール箱に捨てられていた4匹の子猫は発見者の迅速な行動に救われ、奇跡的に助かりました。今ではすくすくと育ち、2匹はすでに里親に引き取られ、残り2匹も譲渡先が決まり、その準備中です。愛護動物を遺棄した場合「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」と定められています。改めて言いますが「猫を捨てるのは犯罪」です。

 2019年7月の深夜、「猫が捨てられている」と私たちが運営している保護施設に連絡が入った。運ばれてきた子猫は取り急ぎ引き取ることにした。

 相談者によると、その日夜に車で帰宅した際、駐車場の車止めにダンボール箱が置かれていたという。バックモニターで確認し「こんな所にこんな物を誰が置いたんだ?」と憮然として車から降り、箱の中身をのぞくと、小さな子猫が詰め込まれていたそうだ。

 子猫は生後3週間ほどの乳飲み子4匹。おそらく、きょうだいだろう。すぐに哺乳瓶でミルクを与えると、小さな前足を精いっぱい伸ばし、こちらが心配するほど勢いよく飲んだ。見る見るうちにお腹はパンパンに張り、満足そう。体調は少し風邪を引いていたが、大したことはなさそうだ。4匹ともミルクを飲み干し、私たちもひと安心した。

 このくらいの月齢の子猫はとてもデリケートで、母猫と離れてしまうと時間の経過とともに生存率が下がり、ほとんどが生きていけない。もう少し発見が遅れていると、きっと助からなかっただろう。発見者の迅速な行動が小さな命を救うことにつながった。4匹の子猫は天使の羽のようなふわふわした毛に覆われ、とっても仲がいい。子猫たちのじゃれ合う姿は見ていると、ほっこりさせられた。

 しかし、その一方でやり切れない思いもあった。翌日、警察署を訪ね、子猫の遺棄があったことを告げた。「動物の愛護及び管理に関する法律」では犬や猫といった愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金とある。令和元年6月19日に「動物の愛護及び管理に関する法律などの一部を改正する法律」が公布され、愛護動物を遺棄した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金と強化されている。「猫を捨てると犯罪になる」ことをしっかりと認識してもらいたい。

 今回、子猫の入ったダンボール箱は発見直後に移動させてしまったが、現場状況を写真で残しておくことも大事。“事件”の手掛かりになる可能性がある物を控えておくことで犯人特定につながる可能性がある。子猫が入ったダンボールは証拠品として警察へ提出した。

 話を終えると警察官とともに、そのまま現場へ向かった。問題の駐車場は一般的な平地の月極で、犯人は子猫をダンボール箱に詰め、ここに遺棄したのだ。事情はあったにしろ、とても許される行為ではない。その後も警察官は現場周辺で事情聴取をしてくださったが、現在も犯人は見つかっていない。

 幸い、4匹の子猫はその後は何事もなかったかのようにすくすくと育ち、名前はイー(サビ柄)、アル(茶トラ)、サン(キジ柄)、スー(キジ柄)と名付けられた。中国語で数字の1、2、3、4の意味。おもしろいもので生後2カ月ごろには、きょうだいにそれぞれ特徴が出てきた。

 4匹を一斉にケージから離すと、イーは人に近づいて甘え、ゴロゴロと喉を鳴らす。アルは遊ぶことに夢中になり、サンは用意したご飯へ直行する食いしん坊。スーはやんちゃで、成猫や人にちょっかいをしに行く。そうかと思えば、お母さんが恋しいのか、イーのお腹をチュパチュパと吸っている。みんなそれぞれの性格があり、とても可愛いらしい。

 生後3カ月になると、私たちが代表を務めている動物愛護・福祉協会「60家」の譲渡会に初めて参加した。4きょうだいは初めて大勢の人を目の当たりにしたが、緊張することなくお利口にしていた。この譲渡会では「アルとサンをきょうだい2匹で家族に迎えたい」と声を掛けてくださる優しいご家族がいた。

 アルとサンはトライアル(お試し期間)を経て、この里親の元に正式譲渡となった。そこには先住猫のあおいちゃんがいたが、アルとサンはあおいちゃんと優しいご家族に迎えられた。きょうだいでのお昼寝は日課だという。

 イーとスーも先日の譲渡会できょうだいそろって迎えたいと声が掛かり、現在はその準備中だ。少し大きくなったイーとスーはやんちゃになり、その素早い動きを見ては映画「ジュラシックパーク」に出てくる世界最小級の恐竜「コンプソグナトゥス」のようだといつも思う。スーはいまでも時折、イーのお腹を吸い続けており、これにはついつい笑ってしまう。

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