新型コロナで中国依存の商品や容器が品薄…化粧品やアパレル業界で春の新商品めど立たず
足りないのはマスクだけではない。中国・武漢で発生した新型コロナウイルスの感染が日本でも広がる中、ドラッグストアなどでのマスク不足が深刻になっているが、その影響はマスク以外にも及んでいた。流通アナリストの渡辺広明氏は16日、当サイトの取材に対し、割りばしなど生産を中国に頼っている商品が既に品薄になっていることや、化粧品やアパレル業界で春に向けて新商品発売のめどが立っていない状況を指摘した。
渡辺氏は「日本で流通しているマスクのうち、国内生産は約2割、輸入が8割。そのうち大半が中国製です。現在、中国の工場は日本メーカーよりも中国国内のメーカーからの発注を優先している状況。日本に輸出できるものは現状でほとんどない。日本のマスクが品薄の状況はこの先しばらく続くでしょう」と、マスクについての基本的な状況を示した。
政府側の反応として、菅義偉官房長官は12日の会見で、「1億枚以上の供給」が可能であるとして、早ければ次週にもマスクの品薄が解消されるとの見通しを示した。だが、業界内では「不透明」として、現時点では楽観視できない見方もある。
いずれにしても、マスクだけに限らず、日本が中国に生産を依存している商品は多い。
渡辺氏は「100円ショップなど小売業で販売されている使い捨ての安価な商品。例えば、割りばし、ビニール傘、消毒液、除菌シートなどが既に品薄になっています。割りばしは、中国でも使われていますが、(世界で)最も使用量が多いのは日本です。そして、そのほとんどが中国で生産されています。コンビニでは(弁当など購入時に)サービスで付ける割りばしがなくなると困るので、その確保に努めているようです」と説明した。
さらに、渡辺氏は「春からの新商品にも影響が出ています」として、「アパレルではインナー、アウターとも中国で生産されているもので発売の目途が立たない商品が出始めています。また、化粧品も春の新商品のめども立たずに発売が遅れています。ノズル、ポンプ、ラミネートチューブといった容器が中国で生産されているためです」と解説した。
つまり、化粧品の「中身」はあっても、「器」が不足しているのだ。同様のことは消毒液にも言えるという。渡辺氏は「ハンドソープであれば、詰め替え用があるので(器は同じものを使えるため)品薄にはなりづらいですが、消毒液は詰め替えが少ないのでピンチです。中国で生産されている容器がなくなっているのです」と指摘した。
今後の行方について、渡辺氏は「中国の工場がある場所や中国政府の差配にもよります」と前置きしたうえで、「日本において安定供給の“最後の場所”となるコンビニの商品が消えると『アウト』です。また、3~4カ月分の在庫のある100円ショップで商品がなくなってくれば、その前段階である『兆し』となります」と解説した。
◆渡辺広明 マーケティングアナリスト。1967年生まれ、静岡県浜松市出身。コンビニエンスストアの店長、スーパーバイザー、バイヤーとして22年間、メーカーのマーケッターとして7年間従事。現(株)やらまいかマーケティング代表。商品開発700品の経験を活かし、顧問、講演、バラエティから報道までのメディア出演と幅広く活動。フジテレビ「Live News a」のレギュラーコメンテーター。