夜回り先生「児童相談所は子どもたちの命の最後の砦」神戸の事案受けて24時間体制を訴える
「少数異見=23=」
真夜中3時過ぎ、小学6年の女児が1人で神戸市内の児童相談所を訪ね、インターホン越しに「家庭のもめ事で家を追い出された」と助けを求めながら、男性職員に門前払いされていたことが分かった。長年に渡って子どもたちと向き合ってきた「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏は、児童相談所を「子どもたちの命の最後の砦」と定義し、24時間体制で対応すべきだと訴えた。
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神戸市で、児童相談所に、深夜、家から追い出され保護を求めた小学6年生の女児が、当直業務を請け負っていたNPO法人の男性職員によって追い返されたという問題が報道されています。しかも、高校生のように見えたからということまで語っているようです。
これは、この児童相談所自体の運営の問題と言うより、この担当職員が、「児童相談所は、子どもたちの命の最後の砦」であり、救いを求めてきた子どもたちは、まずは必ず保護しなくてはいけないという、当たり前のことを教えられていないかったことに原因があるでしょう。しかも、この職員は、児童相談所での保護対象児童が、18歳未満であることも、つまり高校生も保護対象であることも知らなかったようです。
私の研究所には、平日は、1日100件前後の、週末には、200件以上の子どもたちからの相談が来ます。その中には、虐待などによって緊急に児童相談所による一時保護を必要とするものも年間数十件はあります。そのたびに、私の所では、その子どもの居住地域の児童相談所に連絡し、保護してもらっています。
ただ、問題なのは、そのような緊急の相談が届くのは、ほとんどが午後10時から午前3時頃という深夜であることです。それでも、一時保護施設を施設内に持っている児童相談所の場合は、必ず職員が当直していますから、その職員と話して保護してもらっています。ただ、所長等の許可を得るために多くの時間がかかります。
今回のケースでは、当該児童相談所内に保護施設が設置されていなかった、あるいは、施設保護をしている児童がいなかったなどの理由で、児童相談所の職員が深夜配置されていなかったのでしょう。
児童相談所は、現行の法律の下では、「子どもたちの命の最後の砦」です。その児童相談所が、24時間体制での子どもたちからの相談を受ける体制や保護する体制を取っていないことが、今回の問題の原点だと考えます。
児童相談所の現在の人員や組織の体制が、すでに厳しい状況であることは、私も、教員時代から深く児童相談所と関わってきましたから理解しています。しかし、国や自治体が、さらに予算を増やし、多くの専門家を配置し、児童相談所の職員や設置箇所を増やし、速やかに24時間体制で活動できる体制を作らなければ、このような問題はさらに起き続け、最悪の場合、子どもたちの命に関わる問題も生じてしまいます。
児童相談所は、私たち市民の命と安全を守っている警察と同じように、24時間体制で、子どもたちの命を守る体制を作るべきです。それができないのならば、あるいは、それができるまでは、子どもたちの緊急の保護については、交番を含めた警察署に委託すべきです。子どもたちの命を守るためにも。