壮絶…8度の手術を乗り越えたヨークシャーテリア 左前足切断もますます元気に
「ほっちー」の愛称でみんなに愛されている星丸君は、体重2.3キロのヨークシャーテリア。まだ3歳、しかもちっちゃな体で、これまでに去勢を含め8度の手術を乗り越えてきました。
繁殖場から保護されたのは、1歳になったばかりの2018年1月。両後ろ足にレッグペルテス(大腿骨頭壊死症)とグレード4のパテラ(膝蓋骨脱臼)、さらに左前足には手術痕があり、地面に着くことさえできませんでした。そのため、レスキューした『岡山保護犬日記』こと中村容子さんの下で何度も手術を繰り返すことになったのです。
まず去勢手術。これは多くのオス犬がすることですが、星丸君は停留睾丸(一定期間を過ぎても睾丸=精巣が腹腔内から陰のうに下りてこない状態)だったため開腹手術となりました。翌月には右足大腿骨頭切除術。3カ月後に左膝のパテラ手術。さらに3カ月後に右膝のパテラ手術。その3カ月後には左肘にプレートを入れて固定する手術を受けました。整形外科の分野では岡山で有名な獣医師に執刀してもらいましたが、それでも経験のない手術で「歩けるようになるか分からない。“手術をさせてもらう”感覚」と言われたそうです。
難しい手術が成功し、今度は翌月、左肩にプレートを入れる手術が行われました。これも成功。ただ、2週間後にレントゲン撮影したところ、肩のプレートと肘のプレートの継ぎ目部分に骨折が見つかってしまいます。ほとんど使っていない足だったため骨がモロくなっていたこと、肩と肘を固定し、力が加わったときの逃げ場がなくなったことが原因と考えられました。
5度目の手術の前あたりでしょうか。星丸君を迎えたいというご家族が現れました。岡山県苫田郡の椋代(むくだい)さんご一家。1月に中村さんから別のヨークシャーテリア(るみちゃん)を引き取っていたご家族です。中村さんのブログを見るのが日課になっていた椋代美子さんは、星丸君のことが気になっていました。そして、春先に初対面したとき、ハートを撃ち抜かれたそうです。
「抱っこしたら、私にぴとーっと寄り添ってきたんです。るみは抱っこが嫌いな上におばあちゃん子だったので、私としてはほっちーがかわいくて、かわいくて。頭から離れなくなりました」
家に帰ってからも「あの子、かわいかったよね」と家族に言い続けた美子さん。秋に再会したとき「他の人には渡したくない!」という思いが湧き上がり、正式に引き取る決心をします。中村さんもたくさんのハンディを抱えた星丸君をよく知らない人のところへは出したくないと考えており、椋代家の申し出は大歓迎!年内には手術がひと通り終わる予定だったので、年明け1月4日を譲渡日に設定していました。
ところが、先述の通り骨折が判明し、譲渡は延期に。中村さんはキャンセルされるのではと心配したそうですが、「今後どうなろうとも気持ちは変わりません!待ちます」という椋代さんの言葉を聞いて、胸が熱くなったと言います。
星丸君は2月に7度目となる手術。骨折箇所に3枚目のプレートを入れ、少し長めの入院を経て、3月21日にようやく椋代家の子になりました。
さあ、これからは家族と楽しい毎日!のはずでしたが、夏のある日、星丸君の左前足はパンパンに腫れ、膿が出てきました。感染症を起こしてしまったのです。獣医師は「もう断脚しか道はない」と判断。8度目の手術で左前足を切断することになりました。術後の獣医師の話では、骨粗しょう症が進行していて骨はボロボロだったそうです。
2歳にして8度の手術。しかも最後は足の切断…。それでも椋代家の皆さんは前向きにとらえました。
「もともと3本足で歩いていたので、切断しても違和感はなかったようです。ぶらぶらさせながら歩く姿を見て、ないほうが楽かもと思っていたくらいなんですよ。骨がモロくなっているから、こちらも抱き上げるときなど気をつかっていましたし。手術の前は、ほっちーがまた痛い思いをするかと思うとつらかったんですけど、今では寝返りが打ちやすくなったみたいで気持ちよさそうにゴロゴロ転がっています。私たちも抱っこしやすくなりましたし、手術して良かったです」(美子さん)
日々の生活で気を付けているのは、星丸君が歩くとき邪魔になるような物を置かないことくらい。といっても、家ではほとんど抱っこしているそうですから、あまり関係ないかもしれません。美子さんが仕事に出ている間はご両親のどちらかが、そして、帰宅後は美子さんがずっと抱っこしているそうです。「カンガルーエプロン」と呼ばれる、お腹の部分に袋がついたエプロンがあり、そこに入っているのだとか。かなりの溺愛っぷりです。
「ほっちーがそこにいてくれるだけで笑顔になれます。私の一番の幸せは、ほっちーが腕枕で寝てくれることですね」(美子さん)
大変な思いをしたけれど、ほっちーは今、たくさんの愛に包まれて幸せいっぱいです!