動物病院の人気看板猫「ドクターゴーくん」 うちの福招きねこ~西日本編vol.14
宮崎市内にある篠原動物病院は、ともに獣医師の篠原秀作院長(55)と理絵さん夫婦が営んでいる。同院で暮らす飼い猫・ゴーくん(オス、3歳)は、不思議なことに、来院する動物や飼い主と触れ合うのが大好き。「ドクターゴーくん」と呼ばれ親しまれている。ゴーくんの「マネジャー兼上司」という理絵さんにその“働きぶり”を聞いた。
理絵さん:ゴーくんは3年前、病院の敷地内で鳴いていたところを義父が保護しました。まだ生後2、3週間くらい。迷い込んだのか、捨てられたのか、どういう経緯でここにいたかはわかりません。義父の囲碁仲間の一人が引き取ってくれるというので、離乳食の時期までここで育てることにしたのですが、その話は結局、立ち消えになってしまい、ゴーくんはそのまま病院で暮らすことになりました。囲碁の「碁」にちなんで「ゴーくん」と名付けたんですけどね。
うちは動物病院ですから、犬猫をはじめ、うさぎ、ハムスター、フェレット、鳥などなど、毎日いろんな動物が飼い主さんと一緒にやってきます。幼いころからそうした環境で育ったからか、次第にゴーくんは、動物と飼い主さんが来院すると、駆け寄っていって「今日はどうしたの?」と言わんばかりに出迎えるようになりました。
愛するペットが体調不良や病気で、これからどうなるのかと不安を抱えている飼い主さんが多い中、ゴーくんは緊張を和らげるように飼い主さんに近づいたり、診察を待つ動物の匂いを丁寧に嗅いだりと、なんだか予備診察をしているようなんです。
犬に吠えられても、他の猫にシャーっと威嚇されても決して反撃することなく、無邪気に近づいていきます。犬猫だけでなく、フェレット、モルモット、うさぎなどの動物も、分け隔てなく寛容な態度で接します。鳥類もです。ゴーくんは適度な距離を保ち、手を出したりしませんが、飼い主さんが怖がる場合は、近づけないようにしています。
来院される方々は、そんなゴーくんをいつしか「ドクターゴーくん」と呼ぶようになりました。「この子(猫)は、ゴーくんだけには心を開くんです」「ゴーくんのおかげで落ち着いていられたよ。ありがとね」などと言って帰られる飼い主さんたちをみると、「でかしたぞ、ゴーくん」と心の中で思ってしまいます。
病院にはゴーくんの他に3匹の猫がいます。茶白のミミ(メス、年齢不明)は近くで地域猫として愛されていたのですが、6年前、交通事故にあい、運びこまれてきた子。脊髄損傷で後脚2本が不自由になり、いまは前脚2本だけしか動きませんが、ちゃんと自分でトイレに行ったり、歩きまわったりしています。入口で日向ぼっこをしていることが多いので、ゴーくんとともに人気者です。ともにキジトラのらりま(メス、3歳)、トト(オス、2歳)は近所で保護した子たち。4匹はそれぞれ仲良しですが、来院する動物や飼い主さんに興味を示すのは、なぜかゴーくんだけです。
ゴーくんは子育ても上手で、保護された子猫が新しい飼い主さんの元へ行くまでの間、面倒をみてくれることもあります。私が忙しくて手が回らないとき「ゴーくん、お願い!」と助けを求めると、どこからともなく現れて、しっかりと子猫の相手をしてくれます。4匹いっぺんにみてくれたこともあれば、警戒心の強い子に根気よく寄り添い、人の膝に乗るまでに心を開かせたことも。いまでは私の優秀な助手ですね(笑)。
当院は傷病野生鳥獣保護の協力病院に指定されており、私は獣医師としての通常業務に加えて、野生動物の保護にも、ボランティアながら一生の仕事として力を入れています。治療やリハビリは長期にわたることも多く、孤独な闘いでもあります。そんなときに、ゴーくんがそっとそばで見守ってくれていると、勇気が湧いてきます。
もしかしたら命を落としていたかもしれない、野良猫として厳しい生活を送っていたかもしれない…。でも、ゴーくんはこうして動物病院という場所で、私たちを手助けしながら、毎日やってくる動物や飼い主さんたちに優しく寄り添っています。そんな自らの役割をしっかり果たしているゴーくんは、私たち夫婦の誇りでもあるんです。
【病院名】篠原動物病院
【住所】宮崎市清水3丁目5-4
【電話】0985-26-1136