さすがは神戸牛!コロナ禍で客足激減も…2万円超ランチメニュー価格を下げない老舗の矜持
コロナ禍はあらゆる業界に波及しています。超ブランド牛「神戸牛」も例外ではありません。インバウンド客や団体客の激減のため、半額セールをする店が続出中。わたしたち消費者にとってはありがたい話ですが、一方で価格を守ろうとする店もあります。その背景にあるものとは。
■神戸牛の半額セールに“衝撃”走る
神戸・三ノ宮を歩いていると「神戸牛」の看板がやたらと目立ちます。中にはビルの1階、2階に別々の店が入っているケースも。3月初旬、神戸牛の街でもある神戸に“衝撃”が走りました。
な、な、なんと、神戸牛を「いまなら半額」で提供する店が出てきたからです。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、キャンセルが相次ぎ、インバウンド客や団体客が激減したためです。
いただく側にとっては悪い話ではありません。しかし、物事はそう単純ではないようです。経済のサイクルを考えると喜べない側面もあり、先を考え、価格をキープしようとする店も一方ではありました。そのひとつが「元祖 鉄板焼ステーキみその」(神戸本店)グループです。
夜のメニューに比べて比較的安価で提供されるランチメニューでも、同店で最高級の「特選神戸牛ランチ」は21000円(税抜き)もします。客足が遠ざかっている今、なぜ価格をキープするのでしょうか。難しい経済の話は分かりませんが、需要と供給のバランスを考えると、下げてもいいように思います。
みその側の考えはこうでした。
「まず、神戸牛が半額になるということで『神戸が大変だ』『神戸は大丈夫か』となってしまいかねない。怖いのは風評被害。それと生産者を守りたいという思いです。しわ寄せがいくのは生産者の方々。神戸牛のブランド力が下がるのが一番怖い。リーマンショックのときも値下げしなかったので、いまが我慢のとき。先を考えると値下げではない、と判断しました」
担当者はさらに、こう続けました。
「確かに、地元の人がなかなか食べられないという声も聞きますが、それだからこそ価値があるという面もあるのではないでしょうか」
実際、神戸牛が高価なのは手に入りづらいからのようです。「指定農家」と言われる神戸牛の生産者の話を聞くと、こんな理由がありました。
「神戸牛のほとんどが淡路で産まれ、但馬で育てられる。年間の生産頭数は6000あまり。牧場の数も少なく、虚弱体質な牛なので増やせないんです。ストレスもたまりやすいので1頭1頭、毎日散歩に連れなならん(散歩させないといけない)し、走らせると筋肉がついて品質が落ちる。神戸牛として認められる合格率は7~8割。それを突破しないといけません」
神戸牛が、そんなにデリケートだったとは。こちらが感心するほど大変な労力。生産者の方は1頭1頭を手塩にかけて育てているようです。
もっとも、いくら老舗の人気店とはいえ、「みその」にもコロナ禍の影響は出ています。直近1カ月のアクセスは減少傾向も、いまは耐えるとき。それでも海外からのアクセスは続いているので、新型コロナが終息するまで、グループ全店で利用する座席を半分にするなどの対策を講じて、営業を続けます。
「神戸牛のブランド力を守り、生産者を守る。それが神戸の観光業を守ることにもつながれば」
しばらくは持久戦が続きそうです。
(まいどなニュース特約・山本 智行)