4月に多発?上司からの「飲もうよ」お誘いにウンザリ…男女間の行き違いとハラスメント
ここ最近はコロナウィルスで飲み会が自粛となり、夜の予定がぽっかりあいてしまったという方も多いでしょう。本来は、春は花見や人事異動で新しい上司が来たりして仲をより深めるため「飲みに行こう」とお誘いを受けることが多いはず。4月以降の飲み会はどうなることかと思いつつ、ふと過去にうけたこんな相談を思い出しました。
■相談「何度もしつこい!やんわりお断りを理解しない上司」
上司から飲みに行こうと言われ、はっきり断るのはどうかと思い「すいませんその日はちょっと」と答えました。するとまた誘われたので「今日は用事があるんで」と断りましたが、またしばらくして「軽く飲みながら○○(業務)について打ち合わせでもしようか」と言われて「難しいです」と答えたのですが。「じゃあいつならいいの?」と言われて唖然。これだけ断っても気づかないのでしょうか。ハッキリ断ればいいのでしょうが、上司がプロジェクトの人員配置などすべて決めるので、あまりご機嫌を損ねたくない気持ちもあり、どうしたら上手に断れるのが悩んでいます(Oさん/26歳)
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似たようなことが、最近ニュースにもなっていました。
若者に人気のブランド「アースミュージック&エコロジー」を展開する、株式会社ストライプインターナショナルの石川社長が、複数の女性社員・スタッフにセクハラ行為を行っていたのではないかという報道です。(*1)
女子社員に送ったとされるLINEがメディアで公開され、メッセージにハートが沢山使われていた事からTwitterでは女性だけでなく男性からも「これはアウトだろ」とコメントがつきました。大企業、女性社員が多いアパレル、著名人ということもあって大きな話題になりましたね。
また社長と社員という断りにくい関係なので、セクハラだけなくパワハラにもあたるのではないかと言う声もありました。
パワハラの定義は、
1:優越的な関係にもとづいて行われること
2:業務の適正な 範囲を超えて 行われること
3:身体的もしくは精神的苦痛を与えること (*2)
要するに、上司(職務上の地位が上の者)が「飲みにいこう」(業務上あきらかに必要性がないこと)をしつように求め、断りづらいがために女性は精神的苦痛を味わった場合、これはパワハラになるよって事なんです。
皆さんも一度は経験ありませんか。はっきり断れないから遠回しに断っているのに、そういう人に限って鈍感なのか「今日がダメなら明日は?」と、スッポンのようなしぶとさで誘ってきます。
誘って駄目が3回だったら、それは予定があわないのではなく「本当にダメ」。つまり行きたくないのだと、どうしてわかってもらえないのでしょうか。
ここまでくると、文面にハートマークがなくても、にっこり笑顔の絵文字やスタンプがあるだけで、見るのも嫌になってきます。
たまたま今回の相談者は女性で相手は男性上司ですが、今は逆に女性上司が男性の部下をたびたび飲みに誘うので「うんざり」というケースも。いずれにしても、ここに「上司と部下」上下関係が厳然とあるからこそ、断る側は不利益があるのではと恐れ、断り方も難しく、悩みもふくらむわけです。
さらには、会社でセクハラ研修をうけ事例のDVD見ながら「これはひどいなぁ」とつぶやいていた本人が、DVDさながら似たようなセクハラ行為を部下にしていた、という呆れるばかりの出来事も聞いたことがあります。事例を見ているときは判断できるのに、自分の事になると途端に判断が鈍るというのは、男女間の関係性については、よくある話です。
上司の一方的な勘違い「なにかとこの子はボクに懐いてくるなぁ、よし飲みに誘ってやるか」「オレがご馳走してやったら嬉しいはず」という思い込み、悪気も下心もないがつい「親愛の情で」肩に手をおいた。「え、これもセクハラなわけ?」というのが上司の本音だったりします。そしてお決まりの「そんなつもりはなかった」発言です。そもそも相手の体に触るのは原則として避けるべきですが。
今後も益々厳しくなるセクハラ判定。自分と相手との関係性を客観的に見ることが、今、職場で働く社会人には求められています。
飲みに誘ってはいけないのではありません。しつこく誘い、遠回しのお断りに気づかない、気づけない無神経さが「ダメ」なんです。
ちょっと気になってる部下と、メッセージのやり取りが盛り上がり、勝手に「いい感じだな」とその気になっていたら勘違いということはよくある話。間違ってもハートマークを送らないようにしましょう。ハートマークを送っていいのは家族や恋人同士だけです!
*1 セクシュアル・ハラスメントの事実は認められなかったが、今後、コンプライアンス徹底およびハラスメント根絶に向けた取り組みを行うと会社HPで発表(20203.3.31時点)
*2 厚生労働省「パワーハラスメントの定義について」より https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000366276.pdf
◆くま ゆうこ デジタルハラスメント対策専門家。株式会社マモル代表取締役社長。自身の強みであるWebマーケティングのノウハウを活かし、 いじめや組織のハラスメントを未然に防ぐシステム「マモレポ」を開発する傍ら、学校コンサルティング、いじめ・ハラスメントのセミナー登壇、執筆を行う。