外出自粛で薬物汚染が拡大…ネット購入&高騰化、兆候はお香や水 夜回り先生に相談者急増
「少数異見=25」
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛を背景にしてネットを通した薬物乱用が急速に広がっているという。実際に、コロナ禍の中で若者からの相談が急増したという「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏がその実態をつづった。
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この1か月、ドラッグ特に覚せい剤を乱用している若者たちからの相談が急激に増えています。10代後半から20代の若者たちからの相談です。実は、薬物汚染の拡がりは、社会の混乱と比例しています。社会が安定していれば、その拡大は抑えられますが、混乱すれば、急速に拡がっていきます。
1990年代半ばから現在に至る「第3次覚せい剤乱用期」は、1991年に「暴力団対策法」によって、急速に資金源を失った暴力団が、「オウム真理教事件」で社会が混乱し、全国の警察がその対策に動き、薬物に対する取り締まりができなくなった間隙をぬって、町で若者たちに対して、資金集めのために、外国人の売人を使い、「スピード」、「S」、「やせ薬」などの名称で密売したことからはじまりました。
また、2011年の「東日本大震災」の時には、生活のパイプライン復旧や緊急支援物資の配布などより遙かに早く、覚せい剤の密売が東北各地特に福島県ではじまり、今に至る大量の乱用者を生み出してしまいました。
今回の「新型コロナウィルス」による社会活動の制限の中で、急速に覚せい剤の乱用が拡がってきています。学校の休校や会社の雇い止め、アルバイト切りによって、家に閉じこもらざるを得ない若者たちが、興味本位でネット等覚せい剤を購入し、その乱用に入っていっています。また、暴力団も、その資金源である夜の町の閉鎖や売春や風俗営業からの収益の低迷の中で、覚せい剤などのドラッグ密売に活路を求めています。
これは、数値的にも把握できます。覚せい剤の密売価格は、2月末には、地域による差はあるものの、1グラム2万円から3万円でしたが、今や3万円から5万円へと上昇しています。当然、覚せい剤の常習者が在宅し続けることとなったため、使用頻度が増し、使用量が増えたことも一因ですが、やはり、乱用者数が増えていることもその背景にはあります。
私のところにこのところ相談してくる若者たちには二つの傾向があります。一つは、家の中に閉じこもり続ける中で、興味本位にネットから覚せい剤を手に入れ使用。一度だけのつもりが、依存症となり止めることができず、助けを求めてくるケースです。もう一つは、それまでも覚せい剤の使用はしていたけれど、学校や会社に行くことで、その使用は週に一度程度で、本人としてはバランスを取っていたのが、今回の事態で、そのバランスが狂い、使用頻度が増し、精神的肉体的な異常の中で救いを求めてくる。あるいは、アルバイトなどの仕事がないためにお金がなく、覚せい剤を手に入れることができず、その依存性から苦しみ助けを求めてくるケースです。この1か月、私は、それらの相談に必死で対応しています。
ドラッグの乱用は、簡単です。でも、それを止め、それから逃げることは、きわめて難しいのです。ドラッグ乱用者の行き着く先は、「1:3:3:3」と言われています。つまり1割は、命を失い、3割は、刑務所か精神病院に。3割は、行方不明(死ぬまで使い続け)、何とか3割が、私たち専門家や自助グループ、医療機関の助けを受け、その回復へと向かっていくという意味です。
ぜひ、10代後半から20代前半の子どもを持つ方々は、自分の子どもたちの様子に注意してください。部屋でお香をたく、そのような様子が見られれば、それは多くの場合、大麻の使用によるにおいを消すためですし、もし部屋の中にたくさんの水のペットボトルが散らかっていたら、それは覚せい剤の離脱期に訪れる渇水のためである可能性があります。そして、もし見つけた場合は、自助グループや専門機関に相談してください。子どもたちの命を守るために。