医療崩壊に続く「治安崩壊」への危惧…コロナ禍で警察が直面する状況と対策とは?小川氏解説
新型コロナウイルスの感染拡大で「医療崩壊」が深刻化しているが、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は22日、当サイトの取材に対し、警察官の不足による「治安崩壊」が起きる可能性があると危惧した。
小川氏は「医療従事者に肉体的、精神的な負担がかかっておられるところですが、警察の体制はどうかということで取材をしてみました」と切り出し、「高知県警の宿毛署の刑事生活安全課の刑事が新型コロナウイルスの陽性反応が出て、その後、警視庁の赤坂署や武蔵野署、神奈川県警の藤沢北署の警察官にも続いた。実際はもっといると思われます」と警察官にも感染が広がりつつある現状を解説した。
その上で、小川氏は「警察官は普段からチームで仕事をすることが多い。通常業務で仕事をするのは同じ係、盗犯係なら盗犯係、知能犯係なら知能犯係でチームとしてやる。ところが、週に1回ほどの当直勤務では、刑事課、交通課、警務課、生活安全課などから12人ずつとか、いろんな課から集まる。そこで1人でも感染者が出ると、濃厚接触者は休まなければならない。当直をやっていた人が自分の係に戻って二次感染が広がるおそれもある…と考えると、1人が感染すると、数十名が休まなきゃいけなくなっている」と説明した。
さらに、同氏は「今はそれほど数が多く出ているわけではないので、警視庁や各県警本部から応援が数10名来て対応しているわけですけど、感染者がもっと増えてくると本部の人員だけでは賄えない。医療崩壊が騒がれているけれど、警察の『治安崩壊』にもつながりかねない」と指摘した。
小川氏は、この「治安崩壊」を防ぐ警察側の取り組みについて説明した。
「仕事をする部屋を完全に分けています。例えば、刑事課に20人いたら10人ずつ2つの部屋に分けて仕事をしている。10人の中で誰かが感染しても、別の10人は大丈夫ということで部屋を分けるのです。そのため、外部で、例えば近くのお寺などを借りて、同じ担当でも分かれて業務をやっているのです。新庁舎や旧庁舎があれば完全に分けて勤務をする。全員出勤でなく、テレワークと出勤者を分けながらやる。テレワークは分析とか資料作り、被害届の点検といったもの。自宅に持って帰れないものがあれば署内などの別の部屋を借りて単独で仕事をするといったことをやってます。交番に関しては、コンビニなどのレジ前で使用している塩化ビニール製の透明シールドを設置し、部外者と対面はしても飛沫は飛ばないよう対策をとっている警察署もありました」
さらに、留置場でも対策が取られているという。小川氏は「留置人の取り調べで、48時間以内に検察庁に送らなければならないとか、勾留10日間、延長勾留10日間についても、コロナだからと言って勾留期間が延びるわけではないので取り調べはやらなくてはならない。留置人が取り調べを受ける時は刑事と同様にマスク着用です。留置場内にいる時はしていませんが。また、新しい留置人については、無症状感染者の可能性がゼロではないので、必ず単独房です。1人部屋にして、最低でも2週間は1人部屋にしているようです。」と説明した。
兵庫県警神戸西署では署長と副署長ら幹部を中心に新型コロナウイルスの感染者が続出している。警察署内のトップとナンバー2が陽性となった場合の対策はどうなのだろうか。
小川氏は「警察署内で個室を与えられているのは署長だけで、副署長はフロアにいます。今、署長と副署長は極力接触しないようにしています。というのは、万一、そろって陽性になると警察署の機能に影響が出る可能性があり、この両者は濃厚接触しないように普段からしている。決済についても担当の幹部署員とは極力、直接報告を避け電話でやるようにしている感じです。書類だけ持って来させて対面はしないとか、署長は自分の机にいて、報告者はソファーにいて2メートル以上離れ、かつマスクをして報告するとかの体制をとっている。治安崩壊したら大変なことですから、警察では大袈裟と言われてもいいくらい対策をしています」と細心の注意が払われている状況を伝えた。