日暮里駅の駅名表示が「ニャンともかわいい」と話題に…由来は「猫の街」地元の女優も絶賛
東京・JR日暮里駅で4月にリニューアルされた駅名表示が「ニャンともかわいい」とSNSで話題になっている。「暮」の冠部分が猫の耳、「駅」の左下が足跡で右側が尻尾という、この漢字2文字に「猫が宿った」というわけなのだ。その意図や背景をJR東日本東京支社の担当者に聞いた。
新たな駅名表示は同駅の北口西側出口。下町情緒漂う商店街「谷中銀座」へと至る出口で、その商店街をつなぐ観光名所の階段「夕やけだんだん」にちなんで、ツイッターでは「夕やけニャンニャン」と命名する投稿もみられた。
JR東日本東京支社は当サイトの取材に対して「日暮里駅も地域に密着した駅づくりの一環で駅名標を設置しました。工事期間はデザイン開始から起算しますと、完成まで約7か月間。地域の方々のご協力を得ながら工事を進め、4月4日より使用を開始いたしました」と説明した。
なぜ、猫か。近くの谷根千(谷中、根津、千駄木)エリアは「猫の街」と称されている。やはり、そこに由来しているのだろうか。同社の担当者に聞いた。
「日暮里駅西口方面に位置する谷根千エリアは、古くから猫の多い街として知られており、最寄りの商店街である谷中銀座のイメージキャラクターも猫を採用しています。また数年前に、日暮里駅社員が猫をモチーフにした『にゃっぽり』という駅オリジナルキャラクターを作成しており、広く親しまれています。このような点を踏まえ、今回、日暮里駅西口を『谷根千の顔』として、親しみをもってもらうため、駅名標は、猫をモチーフにしたデザインとしました」
その遊び心に溢れたデザインはどのような経緯で生まれたのか。
「日暮里駅西口を新たな街の顔のひとつとしたいという思いから、地方の観光駅などにあるような、地域の特色を踏まえたデザインの駅名標を設置することに決めました。当初は、谷中銀座で採用しているフォントに合わせる案や、街に馴染むような和風の既成フォントとする案もありましたが、日暮里駅のオリジナルキャラクターが猫をモチーフにしたものであることや、谷根千エリアが猫の街として古くから親しまれていることを踏まえ、猫の要素を取り入れたデザインとすることに決定しました。既成フォントでは実現が難しかったため、『日暮里駅』のどの部分に猫の要素を取り入れるか、試行錯誤しながら、オリジナルフォントの検討を進めました」
ちなみに、こうした説明の表示や猫のイラスト等は現場には一切なく、普通に歩いているとスルーしてしまう「さりげなさ」がある。谷根千に密着し、猫との生活をライフワークとする女優の川上麻衣子さんは「そこが素敵だと思います。街に馴染んでくれるといいですね」と評した。
川上さんは生まれ故郷・スウェーデン直輸入の小物や自らデザインしたガラス工芸品などを販売するショップ「SWEDEN GRACE」を谷中で営み、千駄木には交流サロン「まいの間」をオープンし、根津に住む。まさに「谷根千を制覇」。猫好きの仲間と立ち上げた一般社団法人「ねこと今日 Neko-to-kyo」の理事長を務める川上さんにとって、地元の窓口となる日暮里駅が猫をイメージした駅名表示を掲げたことを「うれしいです」と歓迎した。
この街の「猫事情」について川上さんに聞いた。「15年以上前くらいには階段に猫がいっぱいいて、その辺から有名になったらしいですね。私は『夕やけだんだん』の看板前で爪を研いでいる猫の写真を撮ったこともあります。黒と茶色の猫を見ました。最近は昔ほど見かけなくて、みんなお店の中に入ったりして、外に出る子が少なくて。でも、街には猫のギャラリーや雑貨、屋根に猫の置物やオブジェがあったりして、そういう意味で猫三昧の街ですよね。猫好きな人も多いと思います」
同社の担当者は「好意的なご意見が多くみられており、お客さまにも喜んでいただいていると感じております」と手ごたえを示す。駅前から緩い坂道を経て少し歩き、夕やけだんだんを降りると谷中銀座。記者は30円のコロッケと40円の焼き鳥を買い、ふと振り返ると、道をさっと突っ切る猫を見た。
(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)