昭和のニュース映像?いいえ、新型コロナ情報です 懐かしのテレビ番組のようだと話題
日本国内で新型コロナウイルスが猛威を振るう現在は、言うまでもなく2020年である。ところがTwitterなどでは3月以降、昭和の頃のテレビ番組を思わせるレトロな映像で、新型コロナの関連情報を伝える謎めいた“ニュース”動画が続々と生み出され、一部で注目を集めている。見る者の時代感覚を確実に混乱させるこれらの動画を作っているのは、都内の映像制作会社に務める西井紘輝さん。驚くべきことに、平成生まれの25歳という。
西井さんの作る動画の最大の特徴は、一見すると「本当にかつて放映された実在する番組なのでは」と思わされてしまうほどの、“あの”時代感の驚異的な再現度だ。「トイレットペーパー、ちり紙も依然、品薄状態にあり…」と読み上げる男性アナウンサーの声の“あの”感じ! 「緊急事態宣言から一夜」という手書き文字から香り立つ“あの”感じ! 試験電波やこもった音質のBGMが醸し出す“あの”感じ! 動画自体、絶妙に粗い質感に加工されており、ブラウン管の時代を覚えている人は、涙が出るほど懐かしく感じるに違いない。
■高校時代、古いローカル番組にハマる
西井さんは1994年、神戸市出身。幼少期から写真や映像が好きで、いつも自分で声を録音したり、動画を作ったりして遊んでいたという。高校生の頃には、YouTubeで自分が生まれる前の関西ローカル番組などを片っ端から見ることに没頭。西井さんは「洗練された今のテレビからは失われた、アナログならではの手作り感や温かみに言いようのない魅力を感じた」と話す。
関西大学卒業後は、好きが高じて映像の道へ。本業の傍ら、昭和から平成にかけての愛するテレビの世界観を再現した動画を趣味で作り続けていたという。
そんな西井さんだから、新型コロナの感染防止対策として「テレワーク」が叫ばれるようになると、「テレワークか…絶妙に古い響きがええやん」と妙な部分に反応。その“古さ”を表現してみようと、3月初旬に「テレワーク」と書いただけのロゴを自作してTwitterに投稿したところ、「すごい昭和感だ」と予想外に大きな反響を呼んだ。
「レトロな世界観と今のニュースを組み合わせると面白いのでは」と手応えを感じ、得意の古いテレビ番組風動画のフォーマットで、新型コロナに関する情報をこまめに発信するように。「有事に関する定時報告放送」とテロップを出した上でその日の感染者数をまとめて紹介したり、ローカル番組よろしく癖が強めの関西弁で正しい手の洗い方を指南したりしている。そんな遊び心を忘れない一方で、感染者数はNHKや共同通信の報道をきちんと確認して正確な数字を伝えることを心掛けているそうだ。
■自分なりのやり方でコロナ禍に向き合う
それこそ新型コロナの影響で、本業の番組制作もほぼストップしている。行き場を失った西井さんの創作意欲が火を噴き、表現の幅も広がっていく。自宅の黒電話で仕事する男性の姿が愉快なテレワークのパロディCMで笑わせたかと思えば、「テレワーク中なのに印鑑を押すためだけに出社を強要された人」の被害を告発する“創作”報道で問題提起も。ただ、新型コロナでは多くの人が大変な思いをしている最中だけに、不快感を与える動画になっていないかを友人にチェックしてもらっているという。
以前は仕事で報道番組にも携わっていたという西井さん。「最初は軽い気持ちで動画を作り始めたけど、今は自分なりのやり方でこの事態に向き合おうと考えている。見てもらうための工夫を模索しつつ、感染対策の啓発や、正確かつ有益な情報の発信に努めたい」と話し、事態の一刻も早い終息を願っている。
ところで、男女問わず動画のナレーションは西井さん自身が担当しているとか。「声色やピッチを変えて1人で演じ分けています」…ってマジかよSUGEEEEEEE!!!
(まいどなニュース・黒川 裕生)