山中教授が推奨したジョギング中のマスク代用品「ネックゲイター」を試着走…その長所短所は?
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ジョギングする人たちのマスク装着の有無についてSNSで論争が起きている。その中で、京都大学iPS細胞研究所所長で2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授がYouTubeで発信した「バフ(Buff)」こと、首回りの防寒グッズ「ネックゲイター」の存在が注目されている。ジョギング時のエチケットとしてマスク代わりに装着するというものなのだが、果たして、走行中に支障はないのか。個人差はあるという前提でもって、実際に装着して走ってみた。
タレント・たむらけんじが20日付ツイッターに「(川沿いの遊歩道で)子供やご年配の横をマスクもしてないランナーがハァハァいいながら駆け抜けていく!アホランナーええ加減にせぇーよ!マスクなしで走りたいんやったらお前の家の中走りまくっとけ!」と投稿。「マスクしてないランナー=悪にされてしまった」という反論にも、たむらは「マスクしないで、人がいる所を走って、ソーシャルディスタンスも守っていないランナーは悪」と返した。そういった「善悪」の以前に「(走行中)マスクすると息苦しい」という切実な声もあり、代用グッズを模索する動きが出ている。
山中氏は16日に投稿したYouTubeでいち早くそのことに言及していた。「僕は走る時にマスクをすると顔にくっ付いてしまって苦手です」。そこから「京都マラソンの参加時にいただいたバフ」を取り出し、「普通のマスクより快適です」と推奨した。
「バフ」とはスペインのブランド名で、一般的には「ネックゲイター」「ネックウォーマー」などと呼ばれる。頭からかぶって鼻から首にかけてすっぽり覆い、防寒だけでなくUVカット対策としても使われる。「バフ」でなくても、同じ機能で安価なものを探せばいい。記者はネット通販サイトにて990円で購入。マスクと違って、こちらの品物はすぐに届いた。さっそく、サージカルマスクと交互に装着して、ひと気のない時間帯にこっそり走ってみた。
マスクの場合、鼻息や吐息でマスクの内側がベチャベチャと濡れた感じになり、ウェットな不快感は否めない。その点、ネックゲイターはポリエステル製でしっかりしていて、吐息くらいにはびくともしない。ただ、マスクほど正面から布越しに空気が入りづらく、鼻や首元の隙間から入って来る空気が頼りだ。荒い息にならないよう、走行ペースは抑え気味にすべきだと感じた。
あと、気になったのは、口と耳が同じ密閉空間にあることから、吐く息の音が耳に響くこと。潜水しているような感覚か。休憩してネックゲイターを外すと、水面からプハーッと出たような開放感があった。つまり、決して居心地がいいわけではない。何も着けない方が快適なのは言うまでもないのだが、そうもいかないので、サウナでじっと我慢する感覚でもって、それを外した時の空気のおいしさを水風呂のごとく堪能する。走ることより、むしろ、そこに目的をシフトするという考え方もあるかと思った。
いずれにしても、飛沫感染予防でマスクが必需品とされている現状で、ジョギング中はそれが免除されるという「特権」があるわけはない。問題は「咳エチケット」なので、飛沫を抑えられるネックゲイターによって、マナーとしても、また、世間の「同調圧力」もクリアできる。夏場になると、密閉されたアゴから首にかけて汗で蒸れると予想されるが、場合によっては、アゴから下部分を夏仕様としてカットするなどの工夫も必要だろう。
もう1点、手元にマスクがなくなった人は代用品として日常生活で使うこともありだろう。洗濯できるので、マスクを洗って再利用するよりも抵抗がない。ちなみに、記者は都内在住だが、国からの布マスクは25日時点で届いておらず、手元のマスクも残りわずかなので、近所での買い物などではこちらを着用して歩いている。怪しい風体であるが、こういうご時世だからか、思ったほど奇異な目で見られることもなく、現時点で通報されるといった事態には至っていない。
(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)