高校時代の友人であるJ子は、結婚をして子供が幼稚園へ上がったのを機に、家を購入しました。小さな新興住宅地であるその住宅には、同じような子供を持つ世帯が集まっていました。そこで彼女は、とんでもない隣人と出会い、大変ショックな経験をしてしまいます。これは、私の友人が経験した本当の話です。

J子の周りに住む人たちは、みな穏やかで同じような年代の子供がいる世帯でした。特に斜め前に住むY田さんは、J子が住む半年ほど前に引越していた先輩ママ。困ったことがあれば何かと手助けをしてくれるやさしい人でした。

そして、左隣に住むT野さんは、J子の子供と同い年の息子がいる家です。お互い同じ幼稚園に通わせることもあり、話す機会が多くなりました。近所づきあいも円満で、J子はここに引っ越してきて良かったと心底思っていました。

しかし、夕飯の準備をしている最中、Y田さんが訪ねてきます。そこで、

「隣のT野さんがピアノの音がうるさくて迷惑しているみたいよ」

と伝えてきました。娘にピアノを習わせていたJ子は、それは悪かったと反省します。しかし、その後もY田さんに会うたびに

「T野さんがお宅の娘さんの悪口を言っている」

「奥さんの態度が気に入らないって言ってるよ」

など、告げ口をするようになりました。

Y田さんの言うことを信じたJ子は、徐々に隣のT野さんが怖くなります。相手も避けているのか、外でT野さんに会うと、挨拶もそこそこ避けられてしまうのでした。

そんなある日、J子は別の幼稚園ママから

「T野さんの息子を叱っているの？」

と変な質問をされます。聞けば、T野さんが

「うちの息子が気に入らなくて影で叱っているらしい」

と言っているそうです。さすがに頭に来たJ子は、T野さんに直接話を聞きに行きます。

はじめは驚いて対応したT野さんですが、話を聞くと、実はすべてY田さんから聞いた話であることがわかりました。Y田さんがT野さんへ

「J子さんはあなたのことが嫌いみたいよ」

「おたくの息子を影でJ子さんが叱り飛ばしているのを見たわ」

などと吹き込まれていたのです。

つまりY田さんは、あることないこと、人の悪口を、近所中に言いふらしていたのです。言われた悪口はどれも根拠のないことであり、T野さんもそれまでの話を聞いて、怒り心頭の様子でした。

J子自身でも、Y田さんのことを聞いて見ました。すると、引っ越してきた当初から何かにつけて他人の家に上がりこみ、ひたすら隣人の悪口を言っていることが分かりました。Y田さんの悪口が原因で疑心暗鬼になった近所同士の関係は、すっかり悪くなっていたのです。Y田さんは近所クラッシャーという恐ろしい存在でした。

それからというもの、J子をはじめとした近所の人は、Y田さんが家に来ても居留守を使うようになったそうです。近所の悪い噂はすべてデタラメで、Y田さんの嘘であることがわかった今、Y田さんはすっかり近所の人から嫌われています。なぜ近所同士の悪口を言いふらすのかは謎ですが、ともかく近所クラッシャーは、絶対に関わってはいけない存在です。

（まいどなニュース特約・島田 志麻）