「おいら、アマビエ!」クスッと笑える回文の生みの親…実は「歌ネタ王」だった
「海老?」「マーライオン?」「ううん。おいら、アマビエ!」
2人の何気ない会話。実は、上から読んでも下から読んでも同じ音になる「回文」なんです。下から読むと「えび まあらいおん ううん おいらぁーまびえ」。お見事!
作者は「歌ネタ王決定戦2014」王者のお笑い芸人、手賀沼ジュンさん(40)。新型コロナ以降、一躍有名になった疫病よけの妖怪「アマビエ」を回文ジャンルに進出させた手賀沼さんにお話を聞きました。は
■コロナ沈静化を願い
ーー「おいら、アマビエ!」の回文は、いつ、どんなシーンで思いついたのですか?
「インターネットでアマビエチャレンジが流行っているのを見て。僕もコロナの沈静化の願いを込めて何か発表しようと思い、自分らしく回文で参加をと考えました」
アマビエチャレンジとは、疫病退散のご利益の言い伝えがある妖怪アマビエの似顔絵や造形作品などをSNSに投稿するムーブメントです。
ーー完成までの所要時間は?
「15分くらいでした。回文って、その言葉をひっくり返した時にある程度は展開が決まってしまうところがあるのですが、(アマビエの)名前には「甘エビ」っぽい響きもあるし、見た目は「マーライオン」っぽい感じもあるので、上手いこと単語がはまってくれたなと思いました。ラッキーでした」
ーーイラストも自身で?
「自分で描いてます。回文の出来に自信があったので、少しでも早く発表したくて絵はチャチャッと。もうちょっと時間をかけてていねいに描けばよかったです(笑)」
ーー回文は何歳から?
「30歳くらいの頃からツイッターを使った暇つぶしで作り始めました。今年で10年くらいでしょうか」
■国木田独歩がテトラポッドを!?
手賀沼さんが回文で重視するポイントは、文章として自然である、リズムがよい、内容に味わいがあるの3つ。特にお気に入りの自信作を解説付きで紹介してもらいました。
(1)夜、国木田独歩らとテトラポッド抱きにくるよ
(よるくにきだどっぽらとてとらぽっどだきにくるよ)
[解説]なかなかにシュールで奇想天外な光景を描けたと思っていて気に入っています。
(2)缶けりの利権か…
(かんけりのりけんか)
[解説]子ども達が無邪気に遊んでるのかと思いきやその裏側は真っ黒だった…という壮大な物語がたった8文字の回文で表せました。
(3)平成よ、さいなら!胸に「和」と「令」記し入れ、永遠に眠らないさ、良い世へ!
(へいせいよさいならむねにわとれいしるしいれとわにねむらないさよいせいへ)
[解説]これは令和になった時に作りました。雰囲気ものではありますが、きれいに作れたかなと思います。
■「おこもり」にもぴったり
ーー外出自粛中の頭の体操として、回文作りは適しているのでは?
「回文はアリだと思います。紙と鉛筆やスマホがあれば誰でも挑戦できるのでオススメです。身のまわりの単語をあれこれひっくり返していくと、回文ならではの思いがけない奇想天外な世界が広がったりして楽しいですよ」
ーー初めて作るときの心構えは?
「まずは「お題」となる単語を決めて、それをひらがな化してひっくり返して、元の単語と並べてみて、何か意味がある文章にならないかどうか考えてみてください」
自身のツイッターアカウント(@tegajun)でも「みんなで回文を作ろうの時間」とお題を出題する手賀沼さん。最新回は「みな」。ツイッターユーザーなら誰でも参加可能。「みな○○○なみ」のような一文を目指し、コメント欄に投稿します。
筆者もチャレンジしてみましたが、うーん、難しい。「港と波」「みなKONAMIで美奈子並み」ぐらいしか思い浮かびません。
「最初はなかなかうまくいかないと思います。また、どんな単語からでも回文が作れるわけでもありません。最初に決めたお題にこだわらず、少し考えてみて何も思い浮かばなそうなら、お題をどんどん変えましょう。身のまわりの単語を手当たり次第ひっくり返して回文が作れそうな単語を『探す』感覚でいいと思います」(手賀沼さん)
外出自粛が続く中、ゲームや映画鑑賞、筋トレなどが人気のようですが、回文作りも加えてみてはいかがでしょうか。
【てがぬま じゅん】1979年7月24日、ネパール生まれの帰国子女。早稲田大学第一文学部卒業。サンミュージックプロダクション所属。早稲田大学在学中、小島よしおさんらとお笑いグループ「WAGE」を結成。現在はピン芸人として活躍。1月には初の書籍「回文さがし だんぱつパンダの冒険」(光文社)を出版。
(まいどなニュース/神戸新聞・金井 かおる)