外遊びできず…子のイライラ「もう限界」→理学療法士が勧める“揺れ・回転遊び”で感覚や体幹強化も
新型コロナウイルスの影響で、外出がままならないお子さんたち。私の運営する児童発達支援事業所に通う保護者の方からも、「公園にも連れて行けない」「自宅でずっと過ごしているけれど、もう限界」「子どもが遊べずに、イライラしている」などのお声をよく伺います。そもそも子どもは、じっとすることが苦手。よく動く発達特性のあるお子さんならなおさら、ストレスが溜まっていることと思います。
ところで、子どもが自宅でじっと過ごすことでイライラする原因の一つに「好きな感覚が満たされていない」ということがあります。反対に、好きな感覚が満たされると、気持ちがスッと落ち着いてくることも。例えば、動き回ることが好きなお子さんは、「動いている感覚刺激が好きで、動く刺激が体に入ると気持ちが落ち着く」といったことがよくあります。
そこで、今回は、体に入る色々な感覚刺激のうち、多くのお子さんが好きな刺激の一つ「ゆれや回転の刺激」を取り入れることができる「お家でできる遊び」をご紹介します。
◆感覚刺激には、「快」と「不快」がある
感覚刺激には、「触覚(触る刺激)」「視覚(目に入る刺激)」「聴覚(耳に入る刺激)「前庭覚(ゆれや回転を感じる感覚)」「圧覚(体に圧がかかる感覚)」など、色々あります。大前提として、これらの刺激を「快(好き)」と感じるか「不快(嫌い)」と感じるかは、人によってまちまちです。例えば、ジェットコースター(ゆれたり回転する刺激)が好きな人もいれば、苦手な人もいますが「繰り返し経験したから好きになる」というようなものではないのです。
子どもの場合、「その子が好きな刺激要素のある遊び」を行うことで、気持ちを落ち着かせることができます。今回は、色々ある感覚刺激の中から、多くのお子さんが好きな刺激の一つである「前庭覚(ゆれや回転)」に刺激が入る遊びをいくつかご紹介します。
◆前庭覚への刺激を求めているお子さんの見分け方
遊びを紹介する前に、お子さんが、前庭覚(ゆれや回転)刺激を求めているタイプかどうかを見分けるコツをご紹介します。▽遊園地が好き(ジェットコースターやコーヒーカップなどの乗り物に好んで乗る)▽ソファーの上などで、飛んだり跳ねたりする。▽でんぐり返しやダンスでぐるぐる回るなどの遊びを嫌がらない、またはよくしている-といった特徴があれば、前庭覚への刺激を求めていると言えます。
◆前庭覚に刺激を求める子に効果的なおうち遊び
もし前述したようなタイプであれば、以下のような遊びが効果的でしょう。
【幼児・小学生】
1.一人用トランポリン
・遊び方:一人で、気持ちが落ち着くまで、跳ばせましょう。満足するまでの時間は、子どもによって違います。長い場合、15分以上跳んでいることもありますが、それはまだ満たされていないサイン。自分でやめるまで、そのまま見守ってあげましょう。満足すれば、自分で降りてきます。
・効果:足腰の強化や、体幹筋の強化に効果があります。
2.回転椅子に座ってぐるぐる回る。回りながらキャッチボールをしたり、絵本の動物を当てる
・遊び方:座面が回転する椅子があれば、その上に座って、回転させて遊びます。ただ回るだけではなく、回りながら大人とキャッチボールをしたり、大人が絵本を開いて見せておき、回ってきた時に何の絵が書いているかを瞬時に見て、当てるゲーム要素も取り入れます。
・効果:回転のスピードが上がれば上がるほど、体幹筋の強化に効果があります。また、回転しながらキャッチボールをしたり、絵を当てる遊びは、目のコントロール力(瞬時に見る力)を高める効果もあります。特に発達特性のあるお子さんは、目をうまく使えないお子さんが多いので、目の練習に効果的な遊びとしても使えます。
3.トレーニングボールの上で跳ねる、ソファの上で跳ねる
・遊び方:ヨガなどで使うトレーニングボールの上に座り、自分でぴょんぴょん跳ねる運動をします。小さなお子さんの場合は、大人が腰を支えてあげるなどして、安全に跳ねられるように配慮してください。またソファの上で、自分で跳ねることも同じような効果があります。
・効果:体幹筋の強化に効果があります。また、リズムを刻みながら跳ぶことで、リズム感を養うこともできます。大人が手拍子をして、それにタイミングを合わせて跳ぶ、という遊びなら、聞き取る力(聴覚)を育てることにもつながります。
【幼児】
1.抱っこしてぐるぐる
・遊び方:回転椅子に座らせるのが難しい、小さなお子さんの場合は、大人が抱っこした状態で、ぐるぐる回ります。
・効果:回転椅子と同様の効果があります。また抱っこと楽しい刺激の相乗効果で、親子の愛着関係がより育っていきます。
2.ぶらんこ毛虫
・遊び方:バスタオルやタオルケットに子どもを仰向きで寝かせ、大人2人でハンモックのようにバスタオルごと空中に浮かせます。その状態で、ゆらゆらと左右や縦方向に揺らします。
・効果:揺らしながら子どもの顔を覗き込むことで、子どもは揺れながら大人の顔を見ることになるため、目のコントロール力が育ちます。また、何度か揺らした後、動きを止めれば、人への関心が少ないお子さんの場合、「もう一回して」などの要求行動を促すことにつながります。
◆まとめ
新型コロナウイルスの影響で外出できない状況が続く中、体を動かす刺激を求めているお子さんはストレスが溜まりやすくなり、イライラや癇癪の原因になります。ゆれ・回転刺激である前庭覚刺激は、多くのお子さんが好きな刺激です。発達特性のあるお子さんも、前庭覚刺激を好む方はとても多いです。色々な遊びを通して、前庭覚刺激を入れてあげることで、気持ちの落ち着きを図ることができます。ご紹介した遊びをご自宅で実践して、ぜひストレス解消にお役立てくださいね。
◆西村 猛 脱公務員。株式会社ILLUMINATE代表取締役。子育て支援の事業所を複数経営。幼児期の発達が専門の理学療法士。子どもと姿勢研究所代表。「日本で一番、保育士さんを応援する理学療法士」として全国各地の保育園で幼児の運動発達に関する講義を実践中。キャッチコピーは「特技ものまね、趣味立ち話」。うんちくんグッズ集めに余念がない。