徳之島に帰省中に茶白の子猫を保護、「父の忘れ形見」として引き取る
ある日、車の前に飛び出してきた4匹の子猫たち。運転していた辻本さんの父親は、とっさに急ブレーキを踏んだ。4匹とも保護できたが、まだ産まれて間もない子猫たちは1匹ずつ亡くなった。辻本さんの弟が、1匹だけ生き残った子猫を飼い、後に辻本さんが引き取った。
■父の忘れ形見
大阪府に住む辻本さんは、2009年のお盆に鹿児島県の徳之島に帰省した。その時、突然、父親が運転する車の前に4匹の子猫が飛び出してきた。人が近づいても逃げず、あとをついてきたという。
弟の家の近くで保護したので、辻本さんは子猫たちを弟の家に連れて行った。しかし、幼い子猫たちの体温調整は難しく、毎日1匹ずつ死んでしまった。当時、徳之島には動物病院がなく、気をもみながら様子を見るしかなかった。
なんとか1匹だけ生き残り、弟さんが飼うことになった。数カ月間飼っていたが、新築の家のクロスなどを引っ掻いて困るというので、辻本さんが引き取った。
「冬に父が亡くなったのですが、まるで忘れ形見のようで、法事の時に連れて帰ってきたんです」
■天真爛漫な猫、徳さん
辻本さんは、茶白の男の子の猫を「徳さん」と名付けた。当時、生後6カ月くらいになっていた。
当時、辻本さんは5匹の猫を飼っていたので、徳さんは、その子たちと一緒に暮らすことになった。
徳さんは、とても人懐っこい猫で、お客さんが来るとお座りして出迎えた。友達の家では、その家の猫と階段を上り下りして遊び、まるで自宅にいるかのようにくつろいでいたという。
■忘れえぬ猫
徳さんは、辻本さんに可愛がられて育ったが、5歳になった頃、急に具合が悪くなった。
「朝ごはんを食べなくて、脱水症状かと思い、動物病院でいろいろ検査してもらいました。でも、原因が分からず、すごく吐いて、夕方に亡くなってしまいました。たぶん、心臓が悪かったのだと思います」
辻本さんは、徳さんが亡くなるまでは、縁起をかついで、福ちゃんとか徳さんという名前をつけた。しかし、徳さんも福ちゃんも5歳で亡くなったので、以来、猫の名前に意味を持たせるのをやめた。
たくさんの猫を育て、譲渡している辻本さんだが、徳さんは、なかでも忘れがたい猫だという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)