映画「コロナマン」なぜ“打ち切り”? コロナで爆誕・ダークヒーローの映画看板、緊急事態延長に翻ろう
大阪市の映画館「新世界国際劇場」の手描き絵看板が、新しく替えられた。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言を受け、4月8日から休館中の同劇場。同月21日から「コロナマン 最凶ダークヒーロー爆誕」などの架空作品の看板を劇場に設置し、SNSなどで大きな話題を呼んだ。休業要請の延長を受け、付け替えられた新しい看板は?
大阪のシンボルタワー・通天閣近くのレトロな映画館。入場料1000円、今では貴重になった3本立ての劇場だ。5月7日から上映予定だった「テリー・ギリアムのドン・キホーテ」など3作品それぞれの看板上部には「残念、無念!!」「上映延期決定!!」「コンチクショー!!」と客やファンへのメッセージが入れられ、通行人がスマホを向けていた。
4月には“インチキ映画特集”として「フェイクニュース 暴力報道2020」「決断 戒厳の長き夜」「コロナマン 最凶ダークヒーロー爆誕」と、架空3本立ての絵看板が架けられた。窓口には「劇場最大の大ピンチ!!特攻勝負お楽しみに!!勝つぞ(泣)」との文言も。インパクト大の看板は、ニュース番組などでも取り上げられた。
新世界国際劇場支配人の冨岡和彦さん(52)が「休館を告げる普通のあいさつ文では面白くない。無味乾燥なものよりも、どうせやるんだったら先につながる面白いものを」と、攻めすぎる看板設置を思いついた。同館の看板を手がける映画看板絵師の八条祥治さん(63)に依頼。冨岡さんの文言をもとに、八条さんが遊び心あふれる絵看板に仕上げた。
緊急事態宣言の継続を受け、映画館の休館も延長された。上映する作品がない間は、せっかくバズった「コロナマン」の看板を下ろさなくても…との声もあったが、冨岡さんは「宣言が解除され5月7日から上映再開になった時をにらんで、ゴールデンウイークの連休前には上映作品を決め、看板を制作しなければいけなかった」と振り返る。
5月5日に架け替えられた新しい看板の「コンチクショー!!」などの文字は、緊急事態宣言延長が決まった後に入れられた。「コロナマンに飽きてきたというのもあるんですが…。八条さんの絵看板はうちの劇場のシンボル。無くなれば魅力は半減する。なんとか継続させたいし、描かないと腕が変わってくる」と、国内でも数少なくなった手描きの映画看板へのこだわりを見せる。
大阪府の吉村洋文知事は、府独自の出口戦略としてコロナ感染状況の数値基準「大阪モデル」を公表。達成状況により、施設の休業要請や外出自粛を段階的に解除していくとした。休業要請の早期解除を想定し、新たな看板を依頼中だという。
映画館の片隅には「しばし待て!!行政許可出す その日まで!!」との看板が。劇場スタッフの“心の叫び”に、八条さんは往年の香港映画スター、ブルース・リーの絵をあてた。併設するピンク映画館の看板「絶対再開するから浮気しないでね オ・ネ・ガ・イ・ネ」とともに、道行く人にメッセージを送る。コロナ収束が見通せなくなった場合「コロナマン アライブ」という続編を考えていたと打ち明ける冨岡さん。“封切り”されないことを祈るばかりだ。
(まいどなニュース/デイリースポーツ・杉田 康人)