まるで汚れた羊…被毛が伸び「ドレッドヘア」状態になっていた野良猫 保護され見違えるような姿に
大阪の下町の工業地帯にジョニ男くんはいた。通常、猫は自分でグルーミングするので、長毛種でなければ、野良猫でも毛が汚物で固まってドレッドヘアになることはあまりない。しかし、ジョニ男くんは、まるで汚れた被毛の塊のようになっていた。
■毛をそってくれるボランティアを募集
大阪府西成区の工業地帯、中小企業がひしめく街角にジョニ男くんはいた。7月1日、通勤途中の女性が、あまりにもひどい姿のジョニ男くんを目にして、思わず写真を撮影。7月14日には、その女性の友人の友人がインスタグラムで、ジョニ男くんを保護してくれるボランティアを募った。写真は掲載されていなかった。
なぜジョニ男くんの写真を掲載しなかったのかというと、ひどい写真を掲載することで、フォロワーを集められるとか、募金集めだと思われるからなのだという。同情するだけで、行動してくれない人からの連絡は不要だということを意味していた。投稿には、「西成区で猫のボランティアをしている人はいませんか」とだけ書かれていた。
大阪府に住む猫ボランティアの三井さんが連絡をしてみると、「毛をそってくれる人を探している」と言われたという。
■汚れた羊のような猫
三井さんは、7月14日の夕方、雨がしとしと降りしきる中、西成区のジョニ男くんがいそうな場所に行ってみた。ジョニ男くんは、15分くらいでみつかった。
まるで多頭飼育崩壊の犬か何かのように長く伸びた毛に汚物が絡まって伸びている。近くに樹脂工場の樹脂が漏れているところがあったので、その樹脂が被毛についてしまったのかもしれない。たった1匹でいたわけではなく、きれいな白猫と一緒に2匹でいた。いつも連れ添っているようだった。なぜか不妊手術はすんでいて、2匹ともさくら耳だった。
三井さんは、ジョニ男くんを初めて見た時、「汚れた羊みたい」だと思ったという。
距離を取ってカツオのパウチを与えると、お腹が空いていたのか食いついてきた。エサを与えていた人はいるようで、置きエサがしてあった。しかし、きちんと定期的に与えたり、そうじをしたりしているようではなく、残っていたエサには虫がわいていたそうだ。
■ベテランボランティアさんに引き取られて
三井さんは、いったん帰宅して、どこの病院で毛を刈って、処置をしてもらうか考えた。不妊手術が済んでいるので、TNR専門の動物病院は引き受けてくれない。三井さんは、かかりつけの病院にお願いすることにした。
「院長からは、そもそも捕獲できるのかと言われたんですが、します!と断言しました」
不妊手術をしたということは、一度捕獲機にかかっている可能性が高い。ジョニ男くんは、三井さんが仕掛けた捕獲機を警戒して、中に入っているエサを正面からではなく、横から取ろうとした。いったん追い払い、再び捕獲機を仕掛けると、今度はすぐに捕獲できた。ジョニ男くんはひとしきり暴れていた。白猫は捕獲しなかったが、ごはんをおいしそうに食べたという。
動物病院に連れて行くと、ヘルペスのため目は白濁していて、片目は癒着していた。一応、見えてはいた。推定56歳。歯はボロボロだった。
毛を刈ってもらうと、体重4.9kgなのに毛玉は400gもあった。皮膚にはノミやダニ、シラミが食いついていたので除去した。
その後、三井さんのところは保護猫で満杯だったので、ジョニ男くんは、ベテランの猫ボランティア、辻本さんのところに行った。辻本さんは、ジョニ男くんが心を開くのはかなり難しいと思い、我が子として引き取る覚悟で迎え入れた。ジョニ男くんは、ドレッドヘアを卒業して、見違えるような猫になった。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)