「かわいい」の裏側にある現実…杉本彩がコロナ禍のペット需要を懸念「家族として看取る覚悟を」
コロナ禍に伴う外出自粛や休校が続く中、子どもたちが家にいる時間が増えたことでペットを求める傾向が高まっているという。6月から施行される改正動物愛護法のプロセスにかかわった公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva」の理事長で女優の杉本彩は当サイトの取材に対し、その現象が表面的な「かわいい」だけで終わってしまう可能性を懸念し、その先で起こりうる事態を憂慮した。
学校が全国で一斉に臨時休校となった3月のこと。杉本は親子がペットショップで動物を購入する姿を報じたテレビニュースを見て複雑な心境になったという。
「ニュースでは『家にいる時間が長いからペット購入を考えた』として、親子でペットショップに行く映像が流れたのですが、コロナ収束後には外出するわけで、その時にはどうするつもりなのか?子供に与える『おもちゃ』の感覚で動物を扱っているのではないか?と思いました。また、それをテレビが普通にオンエアし、出演者がにこやかに見ている感覚にも違和感を覚えました」
店頭に並ぶ「かわいい子」たちの裏側で、どんな現実が起きているのか。杉本は「あなたの寂しさを満たすために動物が生まれてきたわけじゃない。結果として癒されることはあったとしても、それが目的であってはいけないと私は思う」と訴える。
杉本は今年出版した著書「動物たちの悲鳴が聞こえる」(ワニブックス)を通して、ペットショップが大企業による「大量仕入れ・大量販売」を行っていると説明。この「命の大量生産」が悪質な繁殖業者の温床になると指摘し、英国など動物愛護先進国では少ない「生体展示販売」の裏側で商品として売れ残った動物の悲惨な実態を描いた。
「その実態を知っている人は知っているが、知らない人は全然知らないという温度差がものすごい。ショーケースに入って、運良くいい飼い主さんに売られていった子たちは稀なわけで、そのバックヤードにはどれだけの犠牲があるか。普通に考えれば分かりますが、都合の悪いことは見たくない意識が働いてしまうというか」
では、どこで動物たちと巡り合えばいいか。杉本は「民間の団体や各市町村の動物愛護センターなどから引き取っていただいて里親になる選択をしていただくことが一番ありがたい」としつつ、「里親には審査があり、誰でも譲渡されるわけではない。環境、体力や年齢的なものとか、さまざまな条件をクリアしなければならない。迎える側の人間がしっかり世話ができて、動物との絆を構築できて初めてお互いに幸せになれる。ご高齢の方は、後見人のような方がいないと譲渡してもらえない。そこをどうサポートできるかは今後の社会の課題だと思います」と語った。
ペットを飼う上で、最期を看取る覚悟が不可欠。杉本が家族と暮らす京都の自宅には共に暮らした犬や猫の位牌がある。
「私が大人になってから見送った犬と猫は13頭になります。どの子も同じ最期はなく、全てが新しい経験なので、いつも考えさせられ、いろんなことを教えられる。別れはつらいですけど、自分の人生においてすごく貴重な体験なのだと思います。自分が人生を終える時の準備をしているというか、自分の死というものがリアルに捉えられるというか」
子供の頃から動物に関することで深く傷ついたり、泣いたり、喜びがあった。「若い時から動物の死と向き合ってきたので、自分の人生の終わり方も考えます。それが動物と一緒に暮らすことの『意味』だと思うんです」。便宜上、人に伝える時は「ペット」や「動物」という言葉を使うが、杉本にとっては「言葉を持たない家族」なのだという。
(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)