10万円の特別定額給付金に便乗した詐欺が横行 メールに電話、偽サイト…こんな手口に気を付けて
10万円の特別定額給付金の支給は決定したものの市区町村によっては、6月以降に振り込みがずれこむところもあります。支給へのタイムラグが発生すればするほど、詐欺被害が起こる可能性は高くなります。
一口に、給付金の便乗詐欺といっても、様々なものがあります。その手法を知って身を守って頂ければと思います。だましは三つの方向・電話、訪問、ネット(三近)から近づいてきますが、このところ目立つのはネットによるものです。
知人のもとに、Gmailをかたり「重要なお知らせ」なるものが届きました。
「皆様へ一律10万円が決定しました。(中略)各市町村の役場でもお申し込みは可能ですが、感染拡大防止のため、極力専用フォームから行う事を推奨します」
そして「専用窓口はコチラをタッチ」とあります。
なりすましの詐欺メールの存在を知っている人ならば、「そこは“タッチ”ではなく、“タップ”だろう」と突っ込みをいれて、だまされないところでしょうが、最近は、ネットを利用する高齢者も多くいます。その方々を狙ってのことでしょう。
「ご高齢者の方にも優しい操作で行う事が出来ます」との文面も続きます。もし、こうしたサイトにアクセスしてしまうと、住所、銀行口座、クレジットカード情報、パスワードに至るまで、様々な個人情報が抜き取られる可能性は高くなりますので、絶対にタップしてはいけません。
当初、マイナンバーカードを持っていれば、ネットからの申請ができて、給付も早く行われるとのことでした。市区町村からの申請書の送付が遅くなることを知り、多くの人がサイトから手続きをしようとしています。また、申請書がいつ届くのか気になり、自治体のHPに繰り返しアクセスする人もいることでしょう。
こうした状況になることは、詐欺師たちはすでに想定済みで、すでに各自治体のHPに似せた偽サイトを次々につくっています。神戸市のものを装った偽HPでも、本物そっくりのつくりになっており、市はサイトアドレスを確認するようにと注意喚起しています。今後、メールやSMS(ショートメッセージ)にこうした偽サイトへ誘導するURLを載せる手口も横行すると思われます。
また、給付金に便乗した詐欺電話も多くかかってきています。市役所の職員を名乗り「特別定額給付金を受け取りますか?」と尋ねてきて、「はい」と答えると、「どちらの銀行に振り込めばよろしいですか?」と尋ねてきたり、「10万円の給付金の書類の書き方を教えます」と言いながら、高齢夫婦世帯なのか、子供と同居しているのかなどの情報を聞き出そうとしてきています。こうしたアポ電、いわゆる詐欺の前触れ電話の後に、いろんなだましの電話がかけてきますが、特に気を付けたいのが、カード詐取に持ち込むケースです。
実は、給付金というワードは、「新型コロナウィルス」と同様に、不安を煽りやすい言葉だからです。
高齢女性のもとに「給付金の手続きをしましたか」と、金融機関をかたる男から電話がかかってきました。「まだしていない」と正直に答えたのでしょう。すると、男は「あなたのキャッシュカードが古いので、このままだと使えなくなりますね。これでは、給付金10万円が受け取れなくなりますよ」と言われて、訪ねてきた偽の銀行職員に「新しいものに換える」との名目で、カードをだまし取られています。
一見、給付金という言葉はポジティブなものに思われるかもしれませんが、実は、その反対に「決められた手続きをしないと、お金は受け取れなくなる」ということで、相手を不安に陥れることができるのです。相手の気持ちのアップダウンを誘うのが、詐欺の手口ですので、給付金はお金がもらえるという高揚する気持ちを喚起させながら、言葉ひとつで転落へと導ける格好のワードなのです。
この他にも、給付金の申請代行をしますという電話も多くあります。
国民生活センターにも「マイナンバーカードを持っていれば、特別定額給付金10万円の支給が早期にできる」「2-3万円の手数料を払えば、代理申請します」と言われたという相談が寄せられています。
まさに今、役所はマインバーカードの暗証番号を忘れた、5年たって電子証明書の期限が切れていたなど、マイナンバー関連の相談で人々が役所に押し寄せています。先のセンターへの相談は4月のものですが、まさに、こうした混乱状況になることを、すでにだます側は見越して電話をかけてきていると思われます。
しかも、こうした電話が必ずしも人の声で、というわけではありません。自動音声ガイダンスで「申請代行」を持ち掛けることもあります。また、高齢者の在宅率が高いことを狙い、家を訪問して給付金の代行サービスを話してくることもあります。給付金をフックにした詐欺のアプローチは、いろんな方向からやってきますので気を付けて頂ければと思います。
◆多田 文明 詐欺・悪質商法ジャーナリスト。怪しいキャッチセールスに誘われたら「ついていく」という手法で潜入取材…だまされた体験の実況中継で話題を集める。ベストセラー『ついていったら、こうなった』は番組化されるなど、テレビ出演や講演、執筆などで幅広く活動中。あらゆる詐欺・悪質商法に精通し、日進月歩の「だましの手口」に引っかからない極意を発信している。