野外フェス、今年はどうなる… 大阪の名物イベンターが語るライブ業界の現状と見通し

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、2月26日から5月末までの期間で中止・延期されたライブやコンサート、演劇などの公演数は、在阪コンサートプロモーター8事業者が関係する関西圏だけで計1222本、うち大阪府内に限定しても935本に上る。試算では大阪の動員総定数は約200万人で、チケット売上に物販売上を含めた総額230億円以上が失われたことになるという。プロモーターやライブ会場、舞台、音響、照明などの関連企業は甚大な被害を受け、かつてない苦境に追い詰められている。大阪の名物音楽フェス「OTODAMA~音泉魂~」などで知られるイベンター「清水音泉」代表の清水裕さんに、業界の現状と見通しについて話を聞いた。

プロモーター8事業者を中心とする「大阪ライブ・エンタテイメント連絡協議会」は今月12日、大阪府の吉村洋文知事に対して業界への経済的支援を求める要望書を提出。府の「休業要請支援金」の対象に、コンサート運営などに関わる、所謂「施設を持たない企業」も含めることなどを求めた。

清水さんも2月下旬以降、公演の延期や中止、払い戻しなどの対応に追われている。並行して、助成の手続きや再開時に備えたガイドラインの構築、ライブハウスの存続援助などを検討しているという。

■ライブ・エンタテインメント業界が求める支援は

--要望の中にある「施設を持たない企業」への支援は大切な視点です。つまり現状では、ライブ・エンタテインメント業界は、大阪府の休業要請支援金の対象外になっているということでしょうか。

「この要望の甲斐があったのかは分かりませんが、その後、支援金は無事に出ることになりました。ただ、50万~100万円といった額なので、3月分の損失を補填すると消えてしまいます。4月以降のダメージを回復するメドはまだ立っていません」

--大阪府の支援金の他に、業界に適用される公的な支援はありますか。また、要望に掲げている「早期、継続的な経済支援」とは、具体的にどのようなものを想定していますか。

「公的支援は一般企業と同じく国からの『持続化給付金』(100万~200万円)、『雇用調整助成金』のふたつがあります」

「継続的な支援の中身としては、まず『家賃』をお願いしたい。イベント業界は倉庫を持っている会社が多いからです。また、業界への影響は長期化が予想されるため、雇用調整助成金の助成率の特例が6月末で終了すると、かなり厳しい状況になることにもご配慮いただきたい。一定期間、税金を免除することなども検討していただけると助かります」

■夏フェス開催「今年は難しいかも…」

--フェスのシーズンを控え、予定通り開催されるのか、音楽ファンはやきもきしていると思います。ただ、京都大作戦(7月)やROCK IN JAPAN FESTIVAL(8月)、RISING SUN ROCK FESTIVAL(8月)などはすでに中止を発表しました。夏以降、関西でのフェス開催の見通しについて、現状ではどのような認識でしょうか。

「主催者ごとに考え方は違うと思いますが、残念ながら、今年は難しいのではないかと感じています。とはいえ、今は行政からのガイドラインが出るのをひとまず待っている、という状況です」

--イベンターとして今、清水さんが最も懸念していること、危機感を持っていることは。

「一番危惧しているのは、表現の基軸となる『ライブハウス』の存続です。極論すると、アーティストがいて会場があれば、ライブはどこででもできます。しかし映画におけるミニシアター、演劇における小劇場などと同じく、音楽の分野でも優れた演者が生まれ、世に出ていくためには、このような自由な『表現の場』が非常に重要な役割を担います。ライブハウスがこれからも存続できるよう、いろいろ考えながら取り組んでいこうと思っています」

--コロナ禍を乗り越えるために必要なこと、イベンターとして今どんなことを考えているかなども聞かせてください。

「影響が長期化するのは目に見えており、所謂『三密文化』で最初に自粛、かつ最後に規制が解かれるであろう我々の産業は、『配信』『ライブ上映』『三密にならない野外』などを駆使していかに“繋ぐ”か、フルスイングできない時期にいかに工夫して続けていくかが問われています」

「いつも『ピンチはチャンス』と捉えますが、正直、今回はなかなか…。いずれにせよ、継続的な助成がないと非常に厳しい状況であることは直視しなくてはならないと思っています」

同協議会は要望書の中で、「再開」に向けた支援にも言及。コロナ禍の終息後には、関西の文化に再び活気を取り戻すため、「行政によるシンボリックなイベントの先導」や「イベント制作費の助成」「会場における感染予防対策費の支援」なども求めている。なお大阪府は、休業中のライブハウスなどが無観客ライブを配信する際の補助金(上限70万円、8月末まで)を設けるなど、支援の姿勢を示している。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

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