夜回り先生がリモート授業に苦言「これが授業なのか」…問われる「教員の良心」、中止して支援を
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、大学ではリモート授業が進められている。実際に体感した「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏は、その問題点を指摘。教員と学生が顔を合わせて接することができるまで同形式の授業は取り止め、学生を支援しながら対面可能になる日に備えるべきと提言した。
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今、私は、2つの大学で教えています。今回の新型コロナウィルスの感染拡大の中で、2つの大学ともにリモート授業で前期の授業を行うこととなりました。各大学からは、様々なネットを使う授業のやり方や、課題学習についてのサポートを受けました。そして、それを受けて、5月から授業を始めています。
しかし、ネット環境や機材の問題で参加できない学生が、半数を占めています。それでも、ひたすら授業を発信していました。今日までは。
でも、そんな自分に嫌気がさしました。これが授業なのか。学生と話し合い、その質問の中で次の学問に対する意識や知識を身につけさせる。この基本的な授業ができません。学生たちの顔を見ることなく、直接彼らの声を聞くこともなく、評価をし、彼らの明日を決める。こんなことができるわけがありません。
今、ほとんどの大学で、国の指導の下、このような形で、今年度の前期の授業を行うようになっています。でも、これは、授業なのでしょうか。学生たちの一生を決める授業と、その評価になるのでしょうか。確かに、高学年の学生のゼミ形式の授業なら、それもできるかもしれません。しかし、私のように何百人の生徒を抱える授業では、それは不可能です。これは、間違いなくすべての大学関係者や大学の教員はわかっているはずです。
いい加減な授業を行い、いい加減に評価し、学生たちの未来を作る。こんなことが許されるはずもありません。大学に通わず、ネットやメールで授業参加が出来、学ぶことができる。それが当たり前なら、校舎や教室は必要なくなります。学問は、そんなものではないはずです。
すべての大学と、心ある教員にお願いです。リモート授業は、完全にすべての学生に対する責任を持つことができないならば止めましょう。そして、この新型コロナウイルスの問題が一段落したら、きちんと授業しましょう。当然、学生たちがそのために受ける金銭的な問題については、大学、政府がきちんと解決するように動きながら。授業料はこれから2年間無料。生活費についても補助。いろいろなことができます。
教育者には、責任があります。ろくに授業もせず、いい加減に評価する。そして、その学生たちの明日をつぶす。許されることではありません。少なくとも、この前期授業に関して、できないことはできない。その対策を大学と政府に求めましょう。それが、教員の良心です。