コロナ禍で里親が探せない…保護猫、保護犬のピンチをオンライン譲渡会が救う
会員制交流サイト(SNS)を使った「猫のオンライン譲渡会」がこのほど、兵庫・宝塚市の「NPO法人 動物愛護・福祉協会60家(ロワや)」で開催された。新型コロナウイルス感染拡大の影響で人を集めた譲渡会が開けない中、窮地に陥っている保護犬や保護猫たち。そんな小さな命を救うツールとして注目を集めているのが、このような「オンライン譲渡会」だ。
今回は、宝塚市で猫の保護・譲渡活動をしているわたしたち「ロワや」と、尼崎市で人と猫の共生を目指し地域の猫活動をしている「つかねこ地域ボランティア」による共催。「ロワや」のシェルターで預かっている里親募集中の猫たちの姿をSNS上でお届けした。初回ということで不安な船出となったが、予想を上回る694人が視聴してくださり「ホッとした」というのが正直な気持ち。しかも、早速2件の里親希望まであった。
譲渡会とは、保護した犬や猫を里親希望の家族に譲り、保護犬や保護猫を家族として迎えてもらうという取り組み。しかし、新型コロナウイルスの影響で動物愛護団体の活動も制限されており、これまで定期的に開催していた対面式の譲渡会が開けない状態が続いた。そこで代替手段として光が当たったのが「オンライン譲渡会」だ。
SNSやYouTubeなどのインターネット動画共有サイトを使い、ネット上で保護犬・猫の里親募集をする。動物愛護団体や譲渡型の猫カフェ、インターネットに掲載されている里親募集サイトなどで広がり始めた。譲渡のハードルを下げすぎることなく、譲渡会に興味を持っていたり、興味を持っていても参加できない人に、ネットを通して里親募集を呼びかけることが目的だ。
今回の譲渡会はインスタグラムのライブ配信機能を使い、猫の紹介や猫に関するクイズを出題するなど趣向を凝らした。ライブ配信のため、視聴者からのメッセージにもその場で対応することができるのが強みだ。
猫たちはふだん生活している空間なので遊んだり甘えてきたりと、のびのびと自分たちの時間を楽しんでいる。譲渡会の会場へ移動することがないため、緊張もせず、ふだんの様子を届けることができた。
「カワイイ」
「人見知りしないですね」
「何歳ですか?」
参加者からは様々な反応あって、中には「猫ちゃんをお届けできる移動距離は?」といった質問も。その場で譲渡に至るまでの説明をすることもできた。猫に関するクイズでは「つかねこ地域ボランティア」が野良猫の死亡原因や飼育方法について4問出題。「全問正解者の中から抽選で猫グッズをプレゼント!」といった参加型の啓発も実施し、視聴者からの回答やメッセージで盛り上がった。
色々な感想が寄せられた中、ある美容師からは「美容院でも言われますが、運営している人の顔が見えると行く勇気が出ますよね。譲渡会に参加できない人も見ることができるし、とても良かったです」といった言葉をいただいた。
初めての試みとあって途中で中継が途切れたり、画面がブレるなど、反省点は多々あった。しかし、オンライン譲渡会は猫にストレスがなく、自然体の猫の姿をお届けできるという点でメリットの方が大きく感じた。今回の取り組みで、いい意味でシェルター訪問の敷居が下がったのであれば、とても良いこと。また、猫たちのふだんの様子を目にすることで「猫の可愛さ」が十分に伝わったのではないだろうか。
新型コロナの状況次第のため、次回開催は未定。しかしリアルの譲渡会が再開した場合も、オンラインの良さを取り入れながら「普段の猫の可愛さ」を発信したい。そして、1匹でも多くの猫を優しい里親さんの元に届けてあげたい。
(NPO法人動物愛護 福祉協会60家代表・木村 遼)