コロナの相談先「電話番号だけでは…」聴覚障害者に高い壁、データベース開設した当事者の思い

 コロナ禍の中、情報収集に思わぬ壁が立ちはだかり不安を感じる障害者は少なくありません。耳が不自由で電話による問い合わせが難しい聴覚障害者らもその一人。新規感染者は減少し終息の気配が見えているものの、今後も第2の波などへの警戒が高まる中、なるだけ早く情報や相談機関につながれるよう、当事者らが全国の問い合わせ先のファクス番号やメールアドレスなどを一覧できるデータベースを立ち上げました。

 「テレビや新聞などでは問い合わせの電話番号しか紹介されないことが多いので、不安に感じるという声は多いです」と話すのは、当事者として体験を度々発信をしてきた、ねこ(お空に耳を置いてきた)(@catfoodmami)さん。「他にも、ファクス番号があっても自宅にファクスが無かったり、コンビニで送るにしても返信はどうやって受け取れば…と悩む声も。コロナ関連の政府や首長などの会見も、最初の頃は字幕も手話通訳もついていませんでしたから…」と指摘します。

 その後、Twitterで多くの声が上がったことで、都知事会見や首相会見には字幕も手話も付くようになったものの「地方の自治体の中には、今もまだ会見に字幕も手話通訳もつかないところも残っており、そういう地域で暮らす聞こえない方々は情報を得られず不安になっている、とよく聞きます」とも。

 自分で各自治体の問い合わせ先を調べようにも、たどり着くまで時間がかかることも多いことから、データベース化に着手。ねこさんら当事者3人を含む計5人で全国の都道府県を地域ごとに分け、福祉や経済施策など調べる内容や検索キーワードを設定してファクス番号とメールアドレスを調べ、わずか1週間で完成させました。

 今月17日に自身のTwitterで紹介したところ「これで何かあった時に助かる」「こういうサイトがあるってだけで安心感が違う」などの声が。また、聞こえる人からも「このサイトを通して、聞こえない方々の存在を今後も頭に入れておかないといけないと気づくことができた」といったコメントが寄せられたといいます。

 「私たちの存在は、この音声優位社会では忘れられがちです。実際、東日本大震災の時から『緊急時や震災関連の放送などには字幕や手話通訳をつけてほしい』と要望しているにもかかわらず、まだ定着すらできていません。東日本大震災、集中豪雨、地震、台風、熊本地震、など今まであらゆる災害が起きている日本ですが、そのたびに要望を出しては忘れられてまた要望を出して…の繰り返しでした」とねこさん。「ですが、今回のコロナの件で、『手話通訳者はマスクをつけてない、なんで?』ということからようやく手話通訳者の存在に対する認識が広まりつつあると感じています。同時に、会見時に字幕や手話通訳がつくことも徐々に当たり前になってきているように思います」と話し、こう訴えます。

 「皆様、どうか聞こえない人たちの存在を忘れないでください。いざという時も『電話番号』だけでなく『メールアドレス』『ファクス番号』も明記することが当たり前になるように、また行政サイトではできればメールフォームの設置を意識してもらえると嬉しいです」

(まいどなニュース・広畑 千春)

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