アベノマスク2枚にならって、チキン2枚!? 大阪で話題を集めた、高級鶏肉の無償プレゼント…配布の会社を直撃
ようやく緊急事態宣言が解除されたとはいえ、日本経済は大きな打撃を受け、コロナショックからなる不況が長引くという見解も多く見られます。そんな中、大阪の鶏肉卸の会社が4月15日から5月9日にかけて、自ら仕入れた鶏肉のもも肉むね肉の2枚(計1kg相当)を地元の人々に無償で配布し続けました。その数、1日に約120kg。それも地鶏や銘柄鶏といった高級な食材ばかり。それらを配布し続けた理由とはー。
当の会社である大阪マルチク株式会社(大阪市浪速区日本橋東)飲食事業部部長の潮田真一さんに話を伺いました。
そもそも、大阪マルチクとはどういう会社ですか。
「地鶏や銘柄鶏、合鴨などを契約した農家から仕入れ、ミナミにある約400店舗の飲食店に卸す会社です。その事業以外に、今回、鶏肉の配布場所にした、チキンショップマルチクと炭焼居酒屋けむりの2店舗を運営しています。チキンショップマルチクは黒門市場にすでに創業して5060年ぐらい経つのですが、これもまた地鶏や銘柄鶏など20種類の鶏肉を専門的に販売し、あと唐揚げのテイクアウトも行なっています。炭焼居酒屋けむりのほうはまだオープンして1年少しの焼き鳥をメインにした炭焼きの居酒屋です」
新型コロナウィルスによる影響はありましたか。
「もちろん、ありました。売上が本社のほうはミナミの飲食店のお客様からの注文が激減して3分の1に。居酒屋もお弁当のテイクアウトを始めましたが半分に減りました。今回、緊急事態宣言が解除されてお客様がじょじょに戻ってきていますが、それでも元の売上に戻るのには時間がかかりそうです」
そんな厳しい状況のなか、どうして鶏肉を無償で配布することを思い立ったんですか。
「それは社長の熱い気持ちからなんです。今回のコロナ禍でミナミのお得意先の飲食店様からの注文が激減したのですが、鶏肉は本来生き物ですから、契約している農家さんに対して仕入れをストップできないというのが実情でした。それで農家さんから納品してもらって毎日さばいていたのですが、たまる一方。それらを処分するぐらいなら、地元の皆様のお役に立てたいという思いからスタートしました」
そういう理由だったんですね。配布したチラシに『安倍総理に習い、鶏肉もも肉むね肉セット2枚無償プレゼント!!』と書いてありましたが、とくにアベノマスクに対抗したというわけではないんですね。
「ええ、それはパロディというか笑いをとりたくて、2枚にしたんです(笑)」
どのような鶏肉を配ったんですか。
「こだわりの飲食店様が使用するような国産の地鶏や銘柄鶏ですから、少し高級な品物です。そのもも肉とむね肉を1枚ずつ、計2枚を1セットにしました」
それを無償というのはすごいですね。どんな方法で配ったんですか。
「チラシを配布したりSNSにアップしたりして、その画像やチラシそのものをチキンショップマルチクや炭焼居酒屋けむりに持参いただいたお客様に配りました。ひとまず区切りをつけるため、5月9日までという期間を設けていましたが、2つの店舗あわせて1日に平均して約120名様に配りました。多い時は、けむりだけで1日150名様に配ったこともあります。店先に長い行列ができて足りなくなって、残念ながら手ぶらで帰っていただくこともありました」
お客様の反応はどうでしたか。
「それはもう喜んでいただきました。今回は1人につき何回でもよかったので、もう何回も来ていただいたお客様もいてお顔や名前を覚えたり、『唐揚げにしたら美味しかった』といっていただいたり、お菓子の差し入れをいただいたり。あと、チキン南蛮などいろいろな調理をした料理の写真をSNSにアップして送ってくれるのを見るのも楽しかったですね」
無償プレゼントを終えた感想はありますか。
「今回は、農家さんを助けたいという思いと、日頃お世話になっているお客様に少しでも恩返ししたいという思いから始めた企画でした。営業時間外の朝早くから鶏肉の袋詰めをしたりして大変なこともありましたが、近所の主婦の方々から「今日は、お肉やってるの?」と声をかけてもらったりと、本当に交流を深めることができてやってよかったなと思っています」
今後の目標などがあれば教えてください。
「今まで、近所の飲食店さんと協力してお花見を企画したり街バルに参加したりと、地元との絆を深めてきました。これからも地域ぐるみのイベントを積極的に企画したり参加したりして、地域密着型の店舗を目指していきたいです」
コロナ禍のなかでも、みんなを笑顔にする鶏肉2枚無償プレゼントを企画した大阪マルチクさん。現在は通常営業中で、炭焼居酒屋けむりは座席数を間引いて、感染予防対策を行っているそうですよ。次はどんなユニークな企画をしてくれるのでしょうか。今後のイベントにも期待が高まります!
(まいどなニュース特約・田谷 信子)