自宅からオンラインで神戸観光!…人気スポット・北野異人館が「バーチャル異人館」の配信開始
神戸の北野異人館のうち「風見鶏の館」「萌黄の館」「ラインの館」の3館が、今月1日からオンライン映像で楽しめる「バーチャル異人館」の無料配信をスタートした。3DとVR(仮想現実)映像による館内の様子を、スマートフォンやパソコンを使って見ることができる。360度ぐるりと見渡せて、まるで館内を歩き回っている感覚を味わえる上に、ドールハウスのように上から立体的な平面図が眺められたり、測定モードを楽しんだりもできる。
「情報は人を動かす」、将来のリアル観光へ
3館は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言後の4月9日から休館していたが、6月1日より時間を短縮して開館した。でも再開後の来館者数は1日1020人程度。通常の10分の1以下と、まだ厳しい状況だ。しかしこうした事態を予想していた異人館は、バーチャルでの情報配信を企画。一般社団法人「VR革新機構」の協力で、5月末に撮影を行った。
「“情報は人を動かす”といいます。視覚情報のバーチャル異人館を見て、ああ、コロナが終息したらぜひ行きたいと、うずうずして欲しいですね」というのは、風見鶏の館館長の明星守さんだ。
100年前の洋館の見どころを探る
ドイツ人貿易商のゴットフリート・トーマス氏の自宅だった風見鶏の館は、他の異人館とも異なる独特の特徴を持つ。4種の建築様式を融合させた外観に、内部はドイツの伝統様式を取り入れつつ、当時欧州で流行していたアール・ヌーヴォー風の装飾を散りばめている。さらに1階は部屋ごとに天井やシャンデリアを変化させ、ドアノブまで凝った造りなのに対し、2階はシンプルだ。
「1階は、頻繁に訪れる客人との社交の場でした。中世の城館風の食堂を見て懐かしく思う、ドイツ出身の客もいたでしょう」。また明星さんは、トーマス氏は部屋の各所に自社が扱う商品を置き、興味を示した客人に勧めたのではないかとも語る。1階はショールームの役割も果たしていたわけだ。
「トーマス氏は、30代前半という若さでこの館を建てた人。もちろん優れた商才の持ち主だったでしょう」。そんな彼が家族との時間を過ごす、プライベート空間が2階だった。
今は「バーチャル異人館」で楽しみ、コロナが終息したらぜひリアル異人館を訪れて欲しいという明星さん。特に風見鶏の館での地下室や、屋根裏部屋を巡る特別な探検ツアーはおすすめという。
「実際に建物を見て触れて、2階の広い窓から神戸の街を眺めていただきたい。100年前にトーマス氏や奥さん、そして娘のエルゼさんがしたのと同じようにね」
(まいどなニュース特約・國松 珠実)