「お前、どないしたん?」と声をかけたら、家までついてきた子猫…募る愛おしさ、もう外の世界には返せない
自宅の前で見かけた子猫。一度目はシャーっと威嚇してきた。しばらく姿を消して、次に会った時は、鳴きながらあとをついてきた。糸川さんは、愛おしさが募り、なつめと名付けて飼うことにした。
■鳴きながらついてきた子猫
2014年8月、大阪府に住む糸川さんは、自宅の前にたたずむ2匹の子猫を見た。兄弟のようだった。近づこうとするとシャーっと威嚇するので、近づくことすらできなかった。
それ以来、2週間くらい子猫たちは姿を見せなかった。糸川さんは、旅行に出かけたが、帰宅すると子猫たちが自宅付近で鳴いていた。姿は見えないが、夜通し鳴いていた。翌日仕事から帰宅する時に、車の下をのぞくと1匹の子猫がいた。もう1匹は、どこに行ったのか分からなかった。ガリガリにやせていて、鳴きすぎて声が枯れていた。糸川さんは、思わず「お前、どないしたん?」と声をかけた。
子猫は、鳴きながら糸川さんの後をついてきた。そのまま一緒に自宅の玄関に入り、牛乳を与え、コンビニに走ってキャットフードを買って食べさせた。
■「とにかくいっぱい食べさせて、そばにいてあげてください」
ごはんを食べ終えた子猫は、しばらく鳴いていたが、1時間ほど経つと近寄ってきてグルグル喉を鳴らして甘えてきた。最初見つけた時にシャーっと威嚇し、警戒していた頃の姿は、そこにはなかった。
「保護した時はガリガリで、被毛はボサボサ、鼻水が出ていて、うまく呼吸もできないような状態でした。くしゃみもしていて、ボロボロといった感じでした」
動物病院に連れて行くと、生後3カ月くらい、とにかくいっぱい食べさせて、そばにいてあげてくださいと言われた。
「この子を外の世界に返すという選択肢はありませんでした。なつめと名付けて飼うことにしたんです」
■散歩に行ったら首輪が外れてしまった
糸川さんは、一度だけなつめちゃんを逃がしてしまったことがある。生後6カ月くらいのことだった。初めて猫を飼う糸川さんは、なつめちゃんを散歩に連れ出した。当時、猫を外に出してはいけないと知らなかったのだ。
「近所の植物公園に行きました。今思えばぞっとするのですが、首輪が外れてなつめが森の中に逃げ込んでしまったんです。半泣きで、絶対に見つからないと思いました」
しかし、糸川さんの奥さんが、岩場に隠れて他の猫を見ているなつめちゃんを発見。抱き上げても逃げず、無事に保護して帰宅した。奥さんは、「縁があったから再び会えたんだよ」とフォローしてくれた。
なつめちゃんは、糸川さんが大好き。帰宅したらニャアニャア甘えて鳴く。後から来た保護猫ビビちゃんのごはんも食べてしまう食いしん坊で、5kg越えの大きな猫になった。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)