「いかにコジャレるか」半世紀の仲・石橋蓮司&桃井かおり、長生きする責任語る

石橋蓮司(78)と桃井かおり(69)の付き合いは、1971年の映画『あらかじめ失われた恋人たちよ』から始まった。「仲なんて全然よくないっ!」とうそぶく2人だが、石橋が約18年ぶりに主演するハードボイルドコメディ映画『一度も撃ってません』(7月3日公開)を本格的に始動させた立役者は桃井だ。出会いから約50年経ってもその関係性は変わらず。ともに同じ時代を生きてきた“同志”の石橋と桃井が、魅力的な歳の重ね方を語る。

深夜のバーで酒を飲み交わす古い友人同士という劇中の設定は現実世界そのもの。虚実入り混じった関係性も本作の見どころだ。年齢もキャリアも先輩の石橋について桃井は「仕事のことではたくさん話をしてきたし、石橋蓮司が今何を考えてどんな演劇を作らなければいかないかという覚悟も見届けてきました。思想と魂の構え方が一流で、一番信頼を置いている演劇人」とリスペクトする。

一方の石橋は「かおりとは彼女のデビュー作で一緒になって以降、節目節目でなぜか会う。導き合う仲というのか、呼び合う関係というのかな。縁とはそういうものなのかもしれない。面白がって生きている人、という印象は昔から変わりません」と固い絆を感じさせる。

桃井は78歳の主演俳優に「大人のコジャレを見せてほしい。私たちに『大人になってよかった。歳食って万歳!』と言わせてほしい」と期待する。いつの世にも若さに価値を置く風潮があるが「それって“若死にした方がマシ”と言っているようなもの」と苦言を呈する。

松田優作さんら志半ばで伝説になってしまった近しい仲間の姿も見てきたからこその苦言である。「生かしておきたかったけれど若くして死んでしまった人もたくさんいます。ならば私たちはしぶとく長生きして、いかにコジャレるか。『若い頃よりもいいね!』と言われる可能性が生かされている私たちにはあるから」と残された者の責任を桃井は感じている。

石橋は歳を重ねることに対して「肉体的にガタもくるし、歳をとるのは嫌です。しかし自然の摂理として受け入れざるを得ない」というも「重要なのは自分に飽きないことです。どんなに歳を重ねようとも、自分に飽きなければいい」と老いのない探求心が活力だ。

桃井も「歳っていくら重ねてもいい。歳をとってできた皺をご褒美のように見せたっていい。それが長生きしている私たちの使命。そして飽きずに自分を探り続けることが大切」と同じ心構えにある。

大楠道代、岸部一徳、佐藤浩市、妻夫木聡ら主演の石橋を慕う面々が集った『一度も撃ってません』には、大人たちの遊び心が詰まっている。同時にそれぞれ魅力的な歳の重ね方をしてきたからこそのコジャレも映し出されている。

(まいどなニュース特約・石井 隼人)

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