ハンディキャップのあるアイちゃんが病院で看護猫に お出迎えやお見舞い…スタッフのように大活躍

 今回は、私の診療生活の中でもとりわけ記憶に残っている、病院で「大活躍」してくれたアイちゃんをご紹介します。

 アイちゃんは、生まれてすぐの事故で両後肢がなく、神経的な問題もあり、自分の意思で排泄できないという障害がありました。

 治療のために入退院を繰り返していたのですが、保護してくれたご家庭が多頭飼育でアイちゃんのお世話をすることが難しかったため病院で引き取ることになりました。

 病院猫となったアイちゃんは、ジャンプができないことや歩行速度がゆっくりだったため、入院室暮らしではなく、日中は、院内で自由に生活をしていました。診察中に、ドアの隙間から、ひょっこり「こんにちは」と顔を出したり、受付フロアに座って、みなさんをお出迎えしたり、お見送りしたり、疲れると特製ベッドでかわいいお昼寝姿を披露したりして、あっという間に病院の看板猫になりました。

 入院している子がいると、お部屋の前に心配そうにじっと座り「お見舞い」をしたり、面会をしているご家族のそばにお邪魔して、おいしいものを一緒にもらったりすることもありました。アイちゃんはスタッフの一員のように院内に存在し、本当にかわいく私たちの癒やしでもありました。

 アイちゃんが亡くなった際には、「病院に来るとアイちゃんに励まされた」「アイちゃんのことが大好きだった」と、飼い主さんたちからお花が届くほどでした。

 大変なハンディキャップをもつアイちゃんは、いつも明るく楽しく生活し、みんなに愛され、みんなの癒やしとなり、みんなの励みとなってくれたすばらしい猫ちゃんでした。

 アイちゃんの日常は、こばやし動物病院のブログ内で、「アイちゃん」というテーマで綴られており、今でも多くの方々に愛されています。

◆小林由美子(こばやし・ゆみこ) 獣医師。1990年開業の埼玉県ふじみ野市「こばやし動物病院」院長。米国で動物の東洋医学、自然療法を学ぶ。治療はもちろん予防やしつけなどにも造詣が深く、講演活動も行う。ペットと飼い主双方に寄り添う診療が信頼を得ている。

(まいどなニュース/デイリースポーツ)

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