「日雇い労働者の街」釜ヶ崎で営む表現活動…「ココルーム」が存続危機のためクラウドファンディングを実施

 大阪市西成区の釜ヶ崎、そこは「日雇い労働者の街」だ。高度経済成長を支えてきた労働者が多く集まる。かつてならたくさんあった仕事は、経済の滞りから減少してしまい、彼らも高齢化してきた。ホームレスとなる人もいる。

 そんな大阪の中でひときわディープな場所に、一見変わった「喫茶店」がある。それは「ゲストハウスとカフェと庭 ココルーム」。この街のオアシスだ。しかし今、新型コロナウイルスの影響で営業存続の危機にさらされ、クラウドファンディングを実施している。

 オーナーは、詩人の上田假奈代さん。上田さんによると、ココルームは「喫茶店のふり」をしているに過ぎないという。かといって、困窮者の生活を支援するわけでもない。「いろんな人たちおじさんたちと一緒に表現活動を行うこと」が本当の目的だ。

 ココルームは、釜ヶ崎の「おじさん」たちと一緒に芸術を学ぶ、ワークショッププロジェクト「釜ヶ崎芸術大学」を主宰。詩、合唱、哲学、天文学など、さまざまな分野のパイオニアを講師として呼び、一緒に学び、議論する。ときには野次のような質問や、持論を繰り広げるおじさんもいる。

 その様子に、講師は「普通の大学じゃありえない」と衝撃を受けるという。

 「ここに来るおじさんたちは、たくさんの苦労を経験されてきた方ばかり。本当に頭が下がる思いです」。字が読めない、けんかをしてしまう、食事を横取りしようとするなど、たくさんのハンデや問題を抱えているおじさんたちと、上田さんは変わらずフラットに接し、ともに「表現活動」を行う。

 「芸術は選ばれた人のためのものではなく、おしゃべりをすること、生活をすること、それだけでもアートです。心を開いてくれてしんどさや悩みを語る、その声や仕草にはとてつもない力が宿っている。私はそれに励まされるんです」

 そんな上田さんの姿勢に惹かれたのか、ここに集うおじさんリピーターは多い。

 「開放的な庭があって、ここで日向ぼっこしにくる人もいますよ。一緒に井戸も掘りました」

 こうしてたくさんの事情を抱える人々の居場所となっていたココルーム。通常の収入源は、カフェやゲストハウスなどの営業収入、寄付、助成金の3つだ。しかし今は客が激減し、収入も減った。「このままでは、居場所をなくした人のための場所を確保できない」。

 かつては「危険な街」と呼ばれた釜ヶ崎だが、近年はインバウンド需要で外国人も増えていた。しかしこの新型コロナウイルスの打撃により、激減。上田さんは、「次にこの街にやってくるのは、コロナで仕事や居場所を失い、困窮した人々」という。

 「これから、どんどん街は変わっていきます。地域住民やこれからここに来る人が、出会いの喜びを分かち合う街であってほしい。そして行き場をなくしても再び生き直せるような受け皿になっていきたい。そんなきっかけを作っていきたいです」

(まいどなニュース特約・桑田 萌)

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス