日本の傘の半数近くはコンビニ発!晴雨兼用の折り畳み傘や逆さ傘などユニークな新商品も
流通アナリストの渡辺広明氏が「ビジネスパーソンの視点」から発信する「最新流通論」の今回は「コンビニの傘」がテーマ。梅雨の季節を迎えて必需品となる傘について、コンビニにおける傘事情をリポートする。
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激動のコロナ禍の中、春をあまり感じないまま過ぎてしまい、もう梅雨なんだとビックリしています。そして今年も半分が終わります。
梅雨時期にはいつも折り畳み傘をカバンに入れるようにしています。
愛用はファミリーマートの超軽量折傘50センチ。折りたたみ時の長さ約22センチとコンパクトで、重量も98グラムでスマホよりも圧倒的に軽いのがお気に入りです。カバンに入れても、持ち歩いている感覚がないぐらいです。
最初から雨が強い時はコンビニ各社のビニール傘で最大の大きさの70センチのものを利用しています。濡れない大きさもさることながら、頑丈なので長持ちします。
業界関係者に聞くと、日本国内での年間傘販売数約1億3000本のうち、コンビニビニール傘だけでも推計6000万本強は売れています。コンビニは国内の半分近くを握る傘の圧倒的にナンバーワンの販売チャネルです。
特に予期せぬ雷雨の時が最も販売チャンスとなり、駅前立地のコンビニでは、1分おきに1本売れるぐらいの束の間の売れ筋商品となります。
コンビニビニール傘は25年前までは、55センチ、 300円(税抜)の価格帯が主流でしたが、雨に濡れたくない緊急購買が主なため、顧客が買うのを止めることはほぼないので、価格を上げても購買離脱はしません。そのため、これまでは大きさや機能を充実して価格を上げてきて、60センチ 、500円(税抜)が現状のメイン商品となっています。
コンビニビニール傘の最大のライバルは実はタクシーの初乗り運賃で、首都圏などではタクシーの初乗り運賃が710円から410円となっていて、コンビニのビニール傘の値段を下回り始めているため、コンビニのビニール傘は原材料が高騰しない限り、今後は価格がこれ以上高くならないと見られています。
コンビニでは今年も最先端の傘が発売されており、ファミリーマートではUVカット99%の晴雨兼用の折り畳み傘を発売。雨の日以外のニーズの取り込みを狙っています。
ローソンでは「逆さ傘」という逆さに開く事で内側が外側になるので、畳む時には手が濡れず、車で利用した時、車のシートを濡らさないという、かなりユニークな展開となっています。
一方、コンビニビニール傘のほとんどは中国製です。その為、コロナ禍で欠品も心配されましたが、中国のコロナ収束が早かった為、杞憂に終わりました。ただし、マスク同様に中国依存からチャイナプラスワンで東南アジアなど他国での生産も視野に入れる必要があるのは、手頃な価格で雨に濡れない今を継続するには必要不可欠です。
◆渡辺広明 マーケティングアナリスト。1967年生まれ、静岡県浜松市出身。コンビニエンスストアの店長、スーパーバイザー、バイヤーとして22年間、メーカーのマーケッターとして7年間従事。現(株)やらまいかマーケティング代表。商品開発700品の経験を活かし、顧問、講演、バラエティから報道までのメディア出演と幅広く活動。フジテレビ「Live News a」のレギュラーコメンテーター。