見えぬ再開後の収益モデル「コロナ禍は未知の厳しさ」 震災乗り越えたライブハウスも生き残り模索

新型コロナウイルス感染拡大の初期に一部でクラスター(感染者集団)が発生したことなどが影響し、自治体の休業要請の対象となっていた各地のライブハウスも6月以降、少しずつ再開に向けた動きが見られるようになってきた。とはいえ当面は「客を減らして間隔を空ける」「モッシュやダイブは禁止」「ステージとフロアの間をシートで遮る」などの対策が求められ、コロナ前のような形の公演ができるようになるまでは、時間が相当かかる見通しだ。6月27日に営業を再開する神戸の老舗ライブハウス「CHICKEN GEORGE(チキンジョージ)」代表の児島進さんも、「収益を上げるのはどう考えても不可能。今のところ打開策の“正解”もわからず、何もかも手探りの状態です」と嘆く。

■開業40周年の年に…

1980年にキャバレーの2階を間借りして生まれたチキンジョージ。1995年の阪神・淡路大震災で全壊したが、年内に不屈の再建を果たし、被災地に音楽を響かせた。

経営見直しのため2005年末でいったん店を閉め、08年5月、現在のビル地下に新装開店。日本を代表するライブハウスのひとつとして、国内外の若手からベテランまで多くのミュージシャンから厚い信頼を寄せられている。

経営するのは進さんと弟の勝さん(専務)、憲次郎さん(常務)という“児島3兄弟”。2020年は開業40周年と進さんの還暦という慶事が重なり明るい年になるはずだったが、コロナ禍で2月後半からライブが軒並み中止・延期され、3月以降は売り上げがほぼゼロに。追い討ちをかけるように、4月中旬には兵庫県から休業要請が出た。

■店が全壊した25年前の震災とは違う厳しさ

休業中は有料の配信ライブにも挑戦したほか、ドリンク代金の前払いでライブハウスを支援する全国的な取り組み「SAVE THE LIVEHOUSE」にも参加。ある程度の手応えは感じている一方、進さんは「正直な話、『収入がゼロではない』くらいのレベルで、損失をカバーするにはほど遠い」と明かす。最大の懸案事項である月100万円の家賃の支払いは、家主の厚意で3月から一時的に猶予してもらっているという。

震災も乗り越えてきたチキンジョージだが、進さんは「自分たちの気持ち次第でいくらでも頑張れた震災とコロナ禍は、全然違う。今は『客を入れるな』『騒ぐな』と足かせをされた状態。客を入れないと商売が成り立たない我々としては手の打ちようがありません」と話す。

休業要請は6月1日に全面解除されたが、すぐにライブができるわけではない。「白紙になったアーティストとの日程調整はこれからの話」と進さん。しかも、普段のキャパがスタンディングで400人、着席で120人ほどのところを、当面は着席のみで上限60~70人と想定しているため、ライブをしても赤字になる可能性が高いという。

進さんは「交通費やギャラも十分に払えないとなると、アーティスト側も長距離の移動を伴うツアーに踏み切れない。コロナ前のようにスケジュールが埋まるのはいつになるのか」と頭を抱える。勝さんも「元に戻るまでには年単位の時間がかかることを覚悟している」と語り、夏以降、チキンジョージという“場”をどう活用していくか知恵を絞りたいという。

■ライブ文化を守る老舗の意地

壁の除菌コーティングなどの対策を講じて迎える再開日の6月27日は、間寛平さんの息子でシンガー・ソングライターの間慎太郎さんが登場。翌28日はOh!Sharelsなどが出演する企画「Twist & GoGo Party」を開催する。

進さん、勝さん、憲次郎さんは「やるからには安全が第一」と口を揃えつつ、「コロナ前のようなライブができるようになったときに、肝心のライブハウスが潰れていたらシャレにならない。40年続けてきた老舗の意地もあるので、どうにか生き残る道を見つけたい」と力を込める。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

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