ギャラの話は一切出ず!?桃井かおりも感激 78歳・石橋蓮司主演作は絆と良心の映画

映画『一度も撃ってません』(7月3日公開)は、御年78歳の石橋蓮司が約18年ぶりに主演したハードボイルドコメディ。佐藤浩市、豊川悦司、江口洋介、妻夫木聡ら主役級の面々が脇役として一堂に会したキャスティングも話題だ。企画始動のきっかけは、原田芳雄さんの七回忌での桃井かおり(69)による鶴の一声だった。いぶし銀俳優久々の主演作はどのようにして生まれたのか。主演の石橋と発起人であり共演者でもある桃井が秘話を打ち明ける。

石橋と桃井は、桃井の映画デビュー作『あらかじめ失われた恋人たちよ』(1971)からの長い付き合い。桃井は「私たちの年齢になると、最近はほとんど誰それの何回忌、誰それの葬式とか、そういう場で人と再会することが多い。松田優作も去り、太地喜和子も去り、勝新太郎さんも去り、原田芳雄までも亡くなってしまいました」と惜しまれながら世を去った名優たちに想いを馳せる。

そこで生けるレジェンドであり同志の石橋に一肌脱いでもらった。「ならばここは一旦、蓮司さんには死ぬのを諦めてもらって長生きしてもらって、私たちに改めて『長生きしたらこんなにもいい俳優になるんだ!』という姿を見せてもらおうと思った」と狙いを明かす。

並々ならぬ想いを受けての主演となった石橋だが「芳雄の七回忌の席で阪本監督からアイディアを聞いたかおりが『蓮司主演で映画を撮ろう!』と言い出して、周りのみんなが賛同するという感じ。俺はもうベロベロに酔っていたので『どうにでもなれ!』という気分でした」と苦笑。

しかし「年齢は違えども、芳雄の家に集まる人というのは同時代をともに生きてきた人たち。そんな方々とかおりの号令から生まれた作品を自発的にやるということに違和感はありませんでした」と体は自然と動いた。作りたいものを作るために志を共にする才能が集結する。それは若かりし頃の石橋が数多く経験した独立プロダクションでの熱き映画作りに似ている。

大作映画に比べると予算は潤沢とはいえない。桃井は「この映画が美しいのは、誰も一切ギャラの話をしていないということ。スケジュールもきつい。それでも“石橋蓮司のためならば行く”という良心がまだ私たちには残っている。この作品には石橋蓮司が生きてきた時間と時代、そこから生まれた俳優仲間たちの絆と良心がある。今回の映画の組み合わせは今後二度とできないだろうし、みんながワッショイ!と一丸になった最後の祭」と出演者たちの心意気を強調する。

主演俳優として石橋が阪本監督とがっぷり四つで組むのは初めて。「映画を作るというのは罪です。しかし役者と監督は一つの罪を犯さないと、深い会話はできない。同罪を犯し、映画という罪について共犯関係を結んではじめてグッと深まるものがある」と石橋は俳優と監督の関係性を説明する。「その先には、僕らが犯した罪という名の映画を観て誰かが救われるかもしれないという希望があります。今回の映画を観て僕らと同罪になってくれるお客さんがいたら嬉しい」と公開後の反響に期待する。

桃井も石橋の思考には同感で「俳優と監督というのは、ただ飲んで可愛い顔をしても本当の意味では仲良くなれません。一緒に本気で映画を作って同じ罪を犯さないとダメ。映画を作るということは、誰かしらを傷つけて誰かしらに迷惑をかける。でもそうまでしても作らなければいけないテーマがある。今回の映画は作らなければいけないものだとみんなが思った。だから作ることができたんです」と確信を持っている。

(まいどなニュース特約・石井 隼人)

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