配偶者が浮気、相手に損害賠償請求すると恐ろしいことにも?…平松まゆき弁護士解説
アンジャッシュ渡部建が複数の女性と不貞行為に及んだことが発覚した。しかも場所は多目的トイレで、1万円を渡して用済みにするなど女性への敬意が微塵も感じられないことから批判には嫌悪感がつきまとった。それでも妻の佐々木希は渡部を支えるとしている。配偶者が浮気をした場合、相手側にどのような法的責任を問えるのか。損害賠償請求をすることは可能だが、浮気相手が配偶者に「半分払って!」と求める権利があり、場合によっては家計が痛むことがあるという。元アイドルの平松まゆき弁護士にQ&A方式で解説してもらった。
Q 夫(妻)が浮気をした場合、誰を相手に、どのような方法で慰謝料を請求することになるのでしょうか?
A 配偶者が浮気をした場合、その浮気相手だけが慰謝料請求の対象であるかのように思う方もいらっしゃいますが、配偶者と浮気相手は法的には「共同不法行為」(民法719条)をしたことになりますので、両者に請求が可能です。
ただし、両者から満額ずつ二重に支払ってもらえるわけではありません。仮に浮気相手だけに請求した場合、後に浮気相手から配偶者に対して「求償権」を行使される可能性があります。共同不法行為であるにもかかわらず「自分だけが支払わされたんだから半分(或いはそれ以上)払って!」というわけですね。夫(妻)に独自の貯金があれば求償されようが知ったことではないのですが、そうでない場合は結局は家計から、求償金を捻出せざるを得ないということになります。請求の方法としては交渉という形で開始されることがほとんどですが、折り合いがつかなければ裁判に移行します。
Q アンジャッシュの渡部さんのような有名人の場合とは違い、既婚者と知らなかったという場合もあるのではないでしょうか?
A それは浮気相手側の「故意過失」の問題です。不貞の場合の故意とは「相手が既婚者であることを知りながら」という意味であり、過失とは「不注意にも知らなかった」という意味になります。
配偶者と浮気相手とがご近所であるとかPTA仲間、会社の上司部下、同僚といった関係であれば、この問題はあまり生じないのですが、既婚者であると知っていたかどうかというのはその人の内心の問題なので、意外と立証が難しいこともあります。相手が既婚者であることを知らなかったとの言い分が裁判で認められた例としては、当然に独身者のみが参加していると想定されるお見合いパーティーで出会った人物が住所氏名職業等のすべてを偽り、巧みに欺き続けられたというような極端な場合です。
Q 夫婦関係が破たんしていると聞かされている場合もありますよね?
A その場合でも「妻(夫)とはとうの昔に終わっている」「近く離婚する」というセリフは浮気をはたらく者の常套句ですから、裁判所で過失ではないとの反論が認められることは難しいでしょう。
Q 今回渡部さんは「デートクラブのように遊べる子」だと思っていたと言っていますが、もし本当に浮気相手がデートクラブの女性だった場合は慰謝料請求はできますか?
A それについてはいわゆる「枕営業判決」と呼ばれる裁判例があります。スナックのママとの不貞が問題になったのですが、裁判例は、商売として顧客の性欲処理に応じたに過ぎないので慰謝料請求できないとしました。ただこの判決には疑問を呈する弁護士も多いですし、個別事情によってはこの裁判例が適用されないことも大いにあり得ます。
◆平松 まゆき 弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハトオールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュー。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。2010年に名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。