乳がん闘病中、支えになってくれた三毛猫 「ずっと横にいてくれる」
戸田家は、乳がんになって退職した奥さんのために、奥さんが好きな猫を飼うことにした。ただし、保護猫を譲渡してもらおうと思っても、乳がんの治療中であることを告げると断られた。それでもなんとか妻のために猫を飼いたいと思った戸田さんは、一生懸命猫を探した。
■猫と暮らしたい
猫の保護団体、淡路ワンニャンクラブでは、子猫が少ない時期はTNRを中心に活動している。2015年の冬、TNRするために猫を捕獲したのだが、淡路島の漁港でみつけたみやっちちゃんは、とても人懐っこい猫だった。ボランティアは、寒空の下、元いた場所に戻す気になれず、みやっちちゃんの里親を探すことにした。
兵庫県に住む戸田さんの奥さんは、2019年1月、乳がんを患った。介護の仕事をしていたが、仕事を辞めて家にいるようになった。もともと猫が好きで飼えるものなら飼いたかったが、働いていると半日以上留守番させることになるので、飼うのはかわいそうだと思っていた。
「家にいるなら猫を飼えるし、妻もずっとひとりでいるより、猫がいたほうがいいと思ったんです」
■譲渡の壁
戸田さんは、最初、猫カフェで猫を探した。何度か通い、気に入った猫の譲渡の話を進めた。最終面接の時、妻の病気のことを言いそびれ、後から伝えると「最初に言ってほしかった」と断られた。猫が来ると期待していた妻は落ちこんだ。
「甘かったと思いましたが、簡単にはあきらめきれずネットでいろいろ探しました。淡路ワンニャンクラブのブログでみやっちを見つけたのが5月半ば。会う前からみやっちにすると決めていました。今度は最初から事情を話しました」
もともと三毛猫がいいと言っていた。大人猫で大人しいということに加え、ひとり暮らしでも大丈夫だと書いてあったのが決め手になった。
「万が一妻が入院した時、私ひとりで面倒をみることになるので、留守番させなければならない。みやっちなら大丈夫だと思いました」。6月3日に淡路島まで迎えに行き、念願の猫との暮らしが始まった。
■闘病中の妻を支える猫
名前はみやっち改め、メイちゃんにした。初日はキッチンのキャビネットの下やベッドの下に隠れて出てこなかった。少しでも早くなれてほしいと思った戸田さんは、ベッドの下に手を入れて、メイちゃんの手を握って寝た。翌朝、チュールを使って外に出すと、それ以来、隠れることはなくなった。
奥さんは、「夫婦の会話が増えました。抗がん剤治療があまりにもつらくて寝込むことがあるのですが、メイは遊べとか要求しません。ずっと横にいて寝ているんです。お互いのペースが合うので良かったと思います。なでるとグルグル喉を鳴らすし、手を近づけるとスリスリします。寒いと布団の中に入ってくるし、信頼してくれているのを感じます」と言う。
メイちゃんを迎えてから3カ月後、再手術のために入院したが、留守中もメイちゃんは落ち着いていたという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)