文章のレイアウトを変えるだけで、読む速度が2倍に!? DNPの「読書アシスト」技術…無償体験が話題に
文章の表示レイアウトを変えるだけで、読むスピードが約1.5~2倍に向上できる…そんな技術がいまネットで話題になっています。目線の動きを無駄なく誘導するようなレイアウトに自動で変換することで「読みやすさ」を高めるといい、ウェブサイトのテキストを自動で速読用レイアウトに変換してくれるブラウザの拡張機能も登場しました。ただいま実証実験が行われており、無償で使い心地を体験することができます。
大日本印刷(DNP)が研究・開発をすすめてきた「読書アシスト」技術で、7月10日より同社が資本提携している日本ユニシスと共同で実証実験が始められました。特設サイトが開設され、青空文庫の小説を速読用のレイアウトで閲覧できるほか、代表的なウェブブラウザ「Chrome」向けに、速読用レイアウトで文章を表示できるようにする拡張機能のプラグインが配布されています。
「読書アシスト」技術とは、独自の文章表示アルゴリズムによって、読んでいる最中の目線の動きをスムーズに誘導し、読むスピードを向上させる文字レイアウトに変換してくれる技術だといいいます。具体的には下記のようなレイアウトに変換されます。
(1)文字のベースラインを文節(意味のまとまり)単位で階段状に下げていく
(2)文節を分断しないよう改行位置を調整
(3)段落単位で行頭を階段状に一字下げ
(4)画面幅や文字サイズに応じて行間・行長・背景色などを調整
こういったレイアウトにすることで、文章を読むときに、目線を文節(意味のまとまり)ごとに上手に動かせるようになり、読むスピードが低下する要因となる「余分な目線の動き」を減らすことができるといいます。
1分間に読める文字数は一般的に400~600字程度といわれていますが、読書アシストのレイアウトにすることで、最大で1000文字程度まで…つまり約1.5~2倍のスピードまでに読む速さを向上させることができるといいます。また、速く読めるようになるために特別な訓練なども必要ありません。
実証実験開始から間もないですが、SNSなどで話題を集めており、実際にレイアウトを体験した人たちからは「めっちゃ読みやすくて感動した」「ぱっと見は違和感あるけどなかなかおもしろい」「効果すごすぎる……! 特に読書のし始めとか集中力にエンジンかける段階で効果バツグン 」といったような声があがっています。
アシストの効果が強いためか「読むスピードに想像が追い付かない感覚があった。実用書はこれで読みたい」と感じた人もいたようです。行頭が階段状に下がっていく様子に、プログラムのコードも書き方と似ていることを指摘する人もいました。
ただ、どのように感じるかは個人差もあるようで、「視線の移動は楽だけど目だけ滑ってる感じがする」「斜めに傾いてる文章をずっと見てたら酔ってきた」「視線移動で期待した位置に行頭がないので、読みやすいというよりも、イライラして疲れる印象がある」といった声も。「読書慣れしている人は、文字列を塊として認識してなんとなく意味を把握しながら読み進めているから、『しっかり読ませる』アシストだと逆に読みづらいのかもしれない。読書が苦手な人にはとてもいいと思う」と感じた人もいました。
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この技術は2012年から同社と公立はこだて未来大学が共同研究を行い開発したもの。同社によると「Webサイトやプラグインの提供など、大規模な実証実験のようなかたちで、この技術を一般の生活者に提供するのは今回が初めて」といいます。
スマホやタブレットなど、多様な情報端末で文章を読むことが多くなっているほか、最近は新型コロナによる外出自粛で、自宅での読書や学習、テレワークなどが増えており、文章を速くたくさん読みたいというニーズが高まっているといいます。
同社は実証実験について「新しい生活様式にあわせた暮らしや働き方が求められていることもあり、当技術を広く一般の方にご体験いただくことで、社会に貢献したいとともに、事業化の可能性を検証をすることが目的です」と説明。「多くの生活者の方にご利用いただき、読みやすさに関する利用者の声を集め、今後の商品化や機能拡張に活かしていきたいと考えています」としています。
実証実験は9月30日までを予定しています。また、「読書アシスト」のレイアウト向けに変換されたHTMLを取得することができるAPIも提供されています。
(まいどなニュース・川上 隆宏)