息子にも女優であることを隠した過去 10年ぶり女優復帰・小野みゆきが空白語る
女優の小野みゆき(60)が、7月24日公開の映画『クシナ』で約10年ぶりに女優復帰した。日本と海外を行き来しながら子育てをしていたために、しばらく仕事の量をセーブ。母親業に専念するため、実の息子にも職業を明かすことはなかった。ところがひょんなことからバレてしまう。目立つことを好まず、女優よりも「裏方に憧れた」という小野が空白の時間を語る。
「仕事をしている瞬間だけが“女優”であって、あとは一切普通の人。サービス精神も皆無ですし、なるべく人目に付かないようにしていたいという気持ちはデビュー当時から変わりません。美術係やインタビュアーなどの裏方に憧れがあったので、カメラの前に立つといまだに緊張します」と40年超のキャリアを誇りながらも、裏方志向が強いために注目されるのが今も苦手だという。
だから息子の幼少期には、女優であることを隠していた。「友達から『女優らしい』という噂を聞いた息子には『私に似ている人がいるのねぇ』とか『芸能事務所でマネージャーをやっていたことがあるから、ちょっと映ったのかも?』とウソをついていました」と妙にリアルな演技ではぐらかしていた。
1979年にモデルとしてデビュー。以降は女優として数多くのテレビドラマや映画に出演。なかでもバラエティ番組「とんねるずのみなさんのおかげです」内のパロディコント「デビルタカマン」での“デビルマン”小野の姿は語り草になっている。バレるのは時間の問題だった。
「息子の中学校の文化祭で役員としてコーヒー係を務めることなりました。教室で一生懸命教わりながらコーヒーを淹れていたら、それを買いに来たお父さん方にバレたんです。『小野みゆきがコーヒーを淹れているゾ!』と騒ぎだして…凄くムカついたっ!」と今だからこその笑い話だ。
“女優”ではなくスタッフの一部であるという意識があり、脚光を浴びたくないという小野には申し訳ないが、近年ジワリジワリと注目を集めている。女優業をセーブしていた小野が久々にメディアに登場したのは、なんと深夜のバラエティ番組「アウト×デラックス」。「番組スタッフになりたい女優」として登場した。やっぱり裏方がいいらしい。
「ガチで見ている大好きな番組なので、本当はゲスト扱いで出演したくはありませんでした。自分が出てしまうと、その後半年くらいは反省ばかりで辛くなって見ることができなくなってしまう。でも番組について何を聞かれてもすべて答えられるくらい大好きで見ているから…」と計2回も出演。番組出演者を鋭く分析するコメントがウケた。
そしてもう一つは、1988年公開の主演映画『死霊の罠』。日本初の本格的スプラッター映画として再評価され、有志によるクラウドファンディングで400万円以上を集めて昨年末初めてBlu-ray化された。小野にとっても思い出深い作品だという。
「私の体に火が走ってヒデキという怪物が産まれるシーンでは、火薬の熱でお腹をヤケドしました。水を降らせるシーンは12月の撮影ということもあり、雪も混じって体の芯から冷えた。予算もないし、毎日泥だらけでした」と昭和ならではのハードな撮影を振り返るが「アクションシーンではバレー部だった経験が活きました。回転レシーブが得意だったので、ノースタントですべてやりました」と誇りを持っている。
鬼として知られる故・池田敏春監督もアクが強かった。「池田監督がイメージする嘔吐演技が上手くできず、火のついたタバコをぶつけられました。『衣装が燃える!』とビックリ。まさに昭和の現場ですが、それだけ池田監督の思い入れは強かったし、私も監督を信頼していました」と懐かしむ。
公開から30年を超えた現在も作品が愛されていることには「しっかりした作品には今も昔も関係がない。勢いと情熱が根底にある作品はずっと残るものです」と実感を込めて「時代を超えて『死霊の罠』が評価されていることを池田監督が知ったら、どれだけ喜ばれたか…」と異才の早すぎた死に無念そうだ。
そんな再注目されつつある小野が約10年ぶりに出演した『クシナ』は、女だけが暮らす男子禁制の山奥の集落を舞台にした母と娘の物語。第13回大阪アジアン映画祭では、JAPAN CUTS Awardを受賞し、北米最大の日本映画祭であるニューヨークのJAPAN CUTSにも招待された。人里離れた山奥で女性だけのコミュニティを形成する集団の長・オニクマ役を小野が務めた。
出演のきっかけは「若いスタッフと仕事をしてみたかった。今の若いスタッフたちがどんなものを作ろうとして、どんな動きをするのか見たかった」とここにも裏方への視線がある。ノーメイクで演じたが「ファンタジーである一方、リアルな生き様がなければいけない。ノーメイクでやりましたが、改めて皺の似合う女優に憧れました」と歳を重ねることへの期待を口にしている。
(まいどなニュース特約・石井 隼人)