「こいつを完璧に飛ばしたいだけよ」ものづくりにかける青春が眩しすぎる…高専生がロケットに挑む漫画が話題
ロケットの打ち上げに挑む高専生を題材にした漫画がネットで話題になっています。学校で時間を持て余していた主人公は、同じ学科の留学生の勢いにほだされて、打ち上げロケットの製作に協力することに。目標は飛ぶ高さを競うロケットコンテストの全国大会。学校内の大会で優勝し、学校代表として出場することはできるのでしょうか…。トライアンドエラーを重ねる中でものづくりのワクワク感に気づき、自分たちが作りたいものを追い求めていく様子は、まさに工業系の学校ならではの青春!…爽やかな物語が、多くの人たちの共感を集めています。
投稿したのは、Webで漫画を公開している無冬季(@After_man_gene)さん。「安定志向で工業系に進学しても人間は狂うよ」とのコメントとともに7月11日、38枚もの画像からなる作品をアップしました。
高専とは、工業高等専門学校の略で、中学卒業生を受け入れて5年間一貫教育で技術者を養成する学校です。主人公の文雄は、学校の誇る就職率の高さにひかれて進学してきたものの、無気力に過ごす学生です。ロケットを飛ばしてみたい留学生のピエールに頼まれて、製作を手伝うことになりました。
3週間もの間に3つもの試作機を作る勢いに「物つくる奴らってマゾと違うか」と感じますが、完璧を求めるピエールに改修のアイデアをぶつけるなど、知らぬ間にものづくりの面白さにハマっていきます。
校内大会の直前にかつてない完成度のロケットを完成させますが、なにか釈然としないピエール。一方で、性能を急速に上げる彼らのロケットに危機感と敵対心を持つものもいて、校内は穏やかではありません…。
迎えた校内大会の日、主人公たちのロケットはなぜかうまく打ち上がりませんでした。悔しがる主人公。一方、ピエールはロケットの改善点が分かったと再び設計図を持ってきます。「まだ作る気…?」と聞く主人公に、ピエールは一言こういいます。「わしゃこいつを完璧に飛ばしたいだけよ」…。
その後、新作のロケットを打ち上げようとする2人の姿が、打ち上げ場にありました。危険行為との制止を振り切り進むカウントダウン…。空を見上げる2人の先には何が見えていたのでしょうか…。
漫画を読んだ人たちからは、「何この熱い話!!︎かっけえ!!︎^_^」「やっぱもの作ってる奴らはかっこええわ!」「二人から放たれる疾風のごとき爽快感と空も貫く思いに感動しました!」といった声が続々と寄せられています。
特に高専を卒業した人たちや、ものづくりに関わっている人たちから「懐かしかったです」「ものづくりの世界に足を踏み入れたときの気持ちを思い出させてもらいました」といったコメントも。学生生活を思い出して「『ピエールくんキャラ濃っ!他の人も中々濃い!』って思ったけど、同級生だいたいこんな感じの人多かった事に思い至りました」という人もいました。
高専でロケットコンテストの挑戦していた人から「自分の事のように感じられて目頭が熱くなりました」という書き込みもありました。「『発射準備よーし』『低空飛行物体なし』ってちゃんと言ってるの細かくて好き。※ロケット飛ばす時は言わないといけない決まり文句」と、漫画のリアルな設定を評価している人もいました。
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無冬季さんのお話を聞きました。
-古い漫画を公開したとのことですが、いつごろ描かれた作品でしょうか。
「2016年ごろの作品です。出版社に持ち込んでいた時代に、実体験に基づいた作品を描いてみるよう編集者に提案されたのが描いたきっかけです」
-実体験ということは…?
「高専で機械工学を勉強しておりました。校舎も、よく見知った母校のモデルにしています」
-なるほど!リプライ欄にも「自分の知っている学校に似ている」とコメントされている方がいましたものね!もしかして、無気力だった学生がパワフルな友達に感化されて変わっていく…とったストーリーにもご自身の体験が反映されていたりしますか?
「自分の高専時代の所感を下地にしていますが、漫画にする上でフィクションも多く混ぜています。高専はモノづくりに熱のある怪物じみた天才たちと、その他大勢を占める(高い就職率が目的で進学してきた)無気力組にキッパリキレイに分かれるのは事実です。しかし作品で描いた、校内で技術を競うような小規模な大会(作中のロケットコンテスト)や、無気力だった生徒がモノづくりに目覚める…といった内容は、短いページ数で『高専感』を出すための設定です」
-あまりにきらきらしたストーリーなので、実話なら素敵!だと思ったのですけど…。
「かわりにロケット発射の掛け声を執拗に描写してみたり、点火スイッチがWiiリモコンの改造品であったり現実に則したを小ネタをチラつかせることでリアリティを担保しようとしています」
-あ!コメントで「自分たちもスイッチにWiiのリモコンを使っていた」という意見がいくつも寄せられていましたね!
「高専生はみんなお金が無いので、マシンのコントローラーやスイッチは、安価なゲームコントローラーを改造して使う傾向があって…これは高専あるあるです! 2016年以前は価格と精度が安定しており改造しやすいWiiリモコンが主流でしたが、今現在の高専生が何を使っているかはコメントでも意見が分かれていたので気になるところです」
-なるほど…。作品にはそのほかにも多数の声が寄せられていますね。
「共感を示すリプライがすごく沢山つきまして、あまりに嬉しくてずっとTwitterに張りついてコメントを何度も読ませていただいてました。コメント欄や引用リツイートで高専やモノづくりの関係者が面白いエピソードを披露してくれたり、読者同士の交流が生まれたりしたことも非常に面白かったです。こちらの方が反応をくれた人たちに楽しませていただいたな、と感じて感謝しています。今回読んでくれた人たちに好いてもらえる作品を今後も作っていきたいと思えるくらい気持ちがあらたまったので、本当にありがとうございますといいたいです」
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無冬季さんはTwitterのほかnoteやpixivでも創作漫画を公開しています。関心のある方はぜひチェックしてみてくださいね!
(まいどなニュース・川上 隆宏)