座席予約で→「アメリカ、ボストン、チャイナ、OKです」って何のこと?<おもしろ業界用語・旅行会社編>

国内観光の需要喚起を目的とする「Go To Travelキャンペーン」がいよいよ始まって、にわかに脚光を浴びている旅行業界。専門用語や隠語の類は数多く存在するが、アルファベットの読み方を伝える際のいい方が独特で、一般人にはなじみが薄い。でもその気になって覚えてしまうと、ふだんの仕事に活かせそうだ。大阪で創業60年の旅行会社を営むFさんに聞く。

■間違いなく伝えるために置き換える

電話のやり取りで、アルファベットの文字列を間違いなく伝えるため、聞き間違えようのない言い方に置き換えるという方法がある。

「メールもオンラインもない時代は、予約を入れる・変更する・取り消しの連絡は電話でやり取りしていたので、確実に伝えるためにA~Zまですべて読み方がありました」

それが表の「主に旧国鉄時代の国内業務」にある読み方で、昔は広く使われていた。

どう使うかというと、仮に「きのくに×号」という列車があったとして、ボックス席(4席が向かい合せの席)1番のA~Dまでを取りたい客がいたら、

「×月×日、きのくに×号、アメリカ、ボストン、チャイナ、デンマーク」と連絡する。予約が取れたら鉄道会社から「×月×日、きのくに×号、アメリカ、ボストン、チャイナ、デンマーク、OKです」と折り返してくるという手順で予約業務が行われていたという。

なんだか難しそうだが、列車の座席は、横並びだと通路を挟んで3席と2席の5席。すなわちA~Eまで覚えておけばいい。

「今はオンラインで流したらおしまい。簡単になりました」

では、航空機の予約を取るときはどうかというと、旧国鉄時代とは別の読み方をするそうだ。

「国際業務で使われる読み方があって、これはA~Zまで覚えておかないと、旅行業界では仕事になりません」

それが表の「国際業務」にある読み方だ。「B」と「D」あるいは「G」と「J」など、聞き間違えやすい発音がある。パスポートの名前を間違えたら大変なので、確実に伝えるためにこういうものが使われる。

ちなみに「日本文字の五十音は使わない」のだそうで、記号も「-(ハイフン)」や「()(かっこ)」があった場合は、そのまま「ハイフン」「かっこ」と伝えるという。

旅行会社が航空券を予約するときは、航空代理店を通す。客の名前を伝えるときに、まず「お名前をスペルアウトします」と前置きする。「スペルアウト」とは、この表に基づいて1文字ずつ送るということ。

例えば「相田」さんだったら「A」エーブル、「I」アイテム、「D」ドッグ、「A」エーブルと伝えたら、電話の受け手は「AIDA」と書き取るわけだ。

これとは別に、アメリカ・ヨーロッパなどいわゆるNATOの国々で広く使われている読み方がある。

それが次の表にある「NATOフォネティックコード」と呼ばれるもの。NATOの軍関係や日本の自衛隊でも採用されている。

3つのうちどれかを覚えておくと、ふだんの電話のやり取りで重宝しそうだ。

最後にワンポイントアドバイスとして「旅行会社を使うメリット」を教えてもらうと、

「旅館やホテルのホームページやパンフレットに載っていない情報を得られること」だそうだ。

たとえば仲居さんたちの接客態度、料理、部屋の雰囲気など、実際に見てきた人にしか分からないことがある。

「“肌感”といいますか、空気感をお伝えできます」

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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