あと1日遅れていたら死んでいた瀕死の子猫…保護主さんと動物病院のスタッフに愛されて元気になる
若様くんは、保護主さんが動物病院にもちこんだ時、ふらふら座ることもできず、ひどい猫風邪で両目を開けることができなかった。善意で保護した男性だが、猫を飼うことはできなかった。動物病院では野良猫の保護をしないが、男性と一緒に一生懸命里親を探した。
■動物病院に連れてこられた瀕死の子猫
東京都に住む飯島さんは、動物病院に勤めていた。2018年11月3日、初診の男性がぐったりした子猫を連れてきた。その人の職場の近くで倒れていたという。猫を飼うことはできないが見過ごせず、病院で治療してもらい、リリースするつもりだったという。
しかし、子猫は一度処置して回復するような状態ではなかった。生後1カ月半くらいの男の子。力尽きかけていてオスワリもフセもできなかった。猫風邪をひいていて、目ヤニがべったりくっついて目を開けることができず、鼻の孔は鼻くそでふさがり、ノミにたかられ貧血にもなっていた。獣医師は、「あと1日保護されるのが遅かったら死んでいた」と言った。
■私が飼おう
ひとまず動物病院に入院させて、男性と病院スタッフが里親を探すことになった。入院した日はICUに入れたが、翌日見に行くとオスワリして鳴いていたので、「昨日のは演技だったの?」と、みんな驚いた。
動物病院では、野良猫の保護を次々依頼されては困るので、あまりおおっぴらに里親を募集できなかった。スタッフは知り合いに声をかけたが、猫を飼おうという人は現れなかった。子猫は飯島さんが以前飼っていた猫に似ていた。飯島さんの好きな柄だった。
「前の子も男の子だったのですが、甘えん坊でした。私は猫とたわむれたいし、甘えてほしいんです。前の子が亡くなって数カ月しか経っていなかったのですが運命を感じ、私が飼うことにしました」
野良猫は警戒心が強いが、子猫は全く人見知りせず、誰にでも愛想を振りまいていた。
二週間入院して子猫は退院したが、保護した男性は自分の猫でもないのに入院費を支払ってくれた。そして、退院直前の若様の姿を見て「すごく元気になった!」と喜んでくれたという。
■甘えん坊の若様くん
前の子の名前は殿様だった。子猫は若様くんという名前にした。
「猫を飼うと、人間より猫中心の生活になるじゃないですか。私たち夫婦より身分が上という意味で前の子は殿様。でも、殿よりは身分は下というので若様にしたんです(笑)」
入院中、ほとんど飯島さんが世話をしたので、若様くんはすっかりなついていて、家に着くとすぐに毛づくろいしたり、おもちゃで遊んだりして楽し気にしていたという。
飯島さんがトイレに行くとついてくるし、人のそばでないと眠れない。仕事に行く時も見送ってくれるし、帰宅すると窓越してニャアニャア鳴いて、ドアを開けるとすりすりする。かまってちゃんで、飯島さんがわざとかまわないと、キュッと噛んで無理矢理じゃれるという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)