元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は年間500杯以上も平らげるラーメン通としても知られ、テレビ番組でラーメンのコーナーを持ち、英国航空や中華航空など国際線5社の機内映像で自身の食レポ「ラーメン捜査」が流されている。小川氏が当サイトにお勧めのラーメン店を紹介する。

　警察にいた時から、楽しみのひとつがラーメンでした。700円(今では1000円)ほどで満腹になり、短時間で味わえて、しかも、美味い。現場の聞き込みや、刑事同士の会話でもラーメンの話題で盛り上がり、仕事がうまくいくこともありました。刑事だった私にとって欠かせない食べ物、それがラーメンだったのです。

　現職時代はラーメンが好き過ぎて年間300杯を食し、昨年は500杯は下らない。1日7杯食べたことも。2019年から静岡朝日テレビの情報番組「とびっきり！しずおか　土曜版」で「ラーメン刑事（デカ）」というコーナーを担当し、静岡県内のラーメン店を訪れ、店主を取り調べて味の秘密を探る「捜査」をしています。静岡のラーメン店の捜査は100軒を超えます。

　私のこだわりは、麺はもちろんのこと、スープまで全て飲み干すこと。それがラーメン店さんに対する「礼儀」だと思っています。スープ作りなどで相当ご苦労されていることを知っているだけに、リスペクトを込めて。

　ただ、塩分の取り過ぎには注意しています。食後には必ずバナナを1本食べています。バナナに含まれるカリウムが塩分の排出を促してくれます。そのお陰かどうかは分かりませんが、血圧は正常です。

　今回、捜査対象となった店は、これまで何度も訪れたことのある、都内の日暮里駅近くにある「麺処 ぶらり」の「鶏白湯ラーメン」です。券販機で食券を買う、庶民的なお店ですが、ミシュランの「ビブグルマン」という、「5000円以下で優れた料理と価格以上の満足感を得られる」と評価された店舗に与えられる称号を得て、15年と16年のラーメン部門でミシュランガイドに掲載されています。

　スープの見た目は濃厚なのですが、一口スープを口にすると、あっさりとした鶏白湯、なんとも優しいスープがすーっと入ってきます。麺は中細平打ちで若干の縮れ麺です。

　同店に勤務して9年目となる職人の山浦さん（45）に「事情聴取」すると、ラーメンに対するこだわりが半端ない。

　都内の製麺所で当店オリジナルの麺を作っていて、若干の縮れにすることにより、スープの絡みを良くしています。通常より多少、加水を増やし、のど越しの良い麺に仕上げています。麺の量は160グラム。通常は120～140グラムが普通ですが、食べ応えがあります。でも、スープがあっさりしているからか、女性のお客様でも残される方はいないとのこと。「スープはラーメンの『命』だと思っています」とは山浦さんの言葉です。

　スープは有名なブランド鶏を毎日100キロ使い、鶏と水だけで出汁を取る。香味野菜も入れていない。最大火力でグツグツ5時間煮る。あくと余計な油を取り除きながら、手を抜くことは絶対にできない。煮た後は自然と冷まし、その後冷蔵庫で一晩寝かすと、翌日にはプリン状になっています。スープには鶏の香りはするが、鶏白湯独特の臭みは一切ありません。

　山浦さんに、その秘密を探ると、「鶏に下処理を、手を抜かず丁寧にしています」とのこと。「他にもあるでしょう？」と突っ込みましたが、「勘弁して下さい」と笑ってごまかされた。そこは企業秘密の様子。「スープが命だが、麺との相性も大事。試行錯誤しながら、今の麺にたどり着きました」。仕事は細かいところまで手を抜かず、盛り付けも丁寧さがモットーとのことでした。

　食べた印象は、コクがあるのに、あっさりスープ。「鶏白湯ラーメン」、絶品です。オーナーは、飲食業30年の菊池いくよさん。ラーメン店には基本的には口を出さないが、週に1度は店のラーメンを実際に食し、味のチェックは怠らないそうです。店のまかないは、当然「ラーメン」です。3人と職人とアルバイトも味のチェックをしています。

　山浦さんにはミシュランの「ビブグルマン」に選出された時のエピソードがありました。「40歳代の男性がラーメンを食べた後、私の方に近づいて来て、『ミシュランに掲載したいのですが』と言って来たので、私は『そういうの、間に合ってますので』と言ってしまいました。その後で名刺をいただきましたが、まだ半信半疑でした（笑）。ミシュランガイドに初めてラーメン店が数件掲載されましたが、その仲間入りができたことは本当に光栄なことでした」。まだまだ、おいしいラーメンを目指していくとのことです。

　＜ラーメン刑事の取調メモ＞

【店名】「麺処 ぶらり」

【所在地】東京都荒川区東日暮里５-５２-５

【最寄駅】ＪＲ日暮里駅（徒歩2～3分）

【定休日】日曜

【営業時間】11時30分～

【お薦め】鶏白湯ラーメン（税込820円）

【スープ】コクがあるのに、あっさりスープの「鶏白湯」

【麺】中細平打ち　若干の縮れ