救出した子猫は緑内障でいずれは失明する運命も… 愛情を注ぎ続ける一家

福岡県に住む佐藤さん一家は、会社員の慶太さん、妻、2人の娘の4人暮らし。そんな一家と子猫の出会いは2019年8月24日、吹奏楽部に所属していた当時中学3年の長女の定期演奏会を家族で鑑賞後、帰宅したときだった。外にはカラスかイタチに襲われたのか、1匹の子猫の亡骸が横たわっていた。

裏庭に埋葬し、手を合わせて家の中に入ろうとしたとき、小学生の次女が「車の下から鳴き声がする」と叫んだ。埋葬した子猫と同じくらいの大きさの子猫が車の下に隠れていた。少し離れたところに母猫のような成猫を発見したため、一家はそのまま見守ることにした。

しかし、その後、子猫の目が腫れていることに気が付いた。慶太さんは放っておくことができず、子猫を抱きかかえ、獣医師の元へ。「感染症の可能性がある」と言われ、点眼薬を処方してもらった。

点眼して母猫の元に戻したが、数日後、今度はその子猫が空き家となっている隣家の床下に入ってしまい出られなくなった。仕事中、奥さんから電話で一報を受けた慶太さんは帰宅後すぐに床下から救出した。これがきっかけとなって家族会議を開き「この子をウチで保護しよう」と招き入れた。子猫を「まめ」と名付け、外猫である母猫を「そら」と名付けた。

実は家の周りに猫がいたことは周知していた。子猫を保護する1年前まで隣の借家には老夫婦が住んでいた。老夫婦は野良猫を可愛がりエサを与えていた。やがておじいさんは亡くなり、あばあさんはそれを機に突然引っ越してしまった。そして残ったのは野良猫たち…。

晴れて佐藤家の一員となったまめくんだが、ある日、遊んでいる際中に目を本棚の角にぶつけてしまった。動物病院で診てもらうと眼圧検査の数値が高いことから専門病院での検査を勧められた。専門医で精密検査の結果、「緑内障です。摘出はしなくていいですよ。恐らくいずれ萎縮して失明します」と宣告され、特に奥さんはひどくショックを受けた。しかし、獣医師の続く言葉で、佐藤さん夫婦は意を固めることになった。

「でもよかったですね。まめが小さいうちで、大きくなって見えなくなるより、本人のストレスが全然ちがいますよ。今まだ見えるうちに家に慣れさせて下さい」

まめくんが将来失明しても、家の中に何があるか、誰がいるかを記憶していれば、初めて行く場所に比べれば過ごしやすいはずだ。

そんな生後11カ月のまめくんは現在、やんちゃ盛り。箱を見ると、とにかく入りたがり、先住猫のこむぎちゃん(4歳、メス)、きなこちゃん(3歳、メス)に「遊んで」とばかりにすぐに飛び掛かる。そして何より奥さんのことが好きなようで、「妻が動くとずっと付いてまわります。目が大きくクリクリで可愛いです」(慶太さん)と一家をメロメロにしている。

母猫のそらちゃんは避妊手術を受け、地域猫として暮らしている。まめくんは相変わらず周囲が見えにくようで、週に何度かどこかに目をぶつけている。佐藤さん一家は毎日炎症を抑える点眼薬をさしている。

(まいどなニュース・佐藤 利幸)

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