長崎・大村発祥「いなほ焼き」店のもふもふ猫 うちの福招きねこ~西日本編vol.18
福岡県糸島市にある「いなほ焼き JR筑前深江駅前店」。いなほ焼きとは長崎・大村発祥のお好み焼き風回転焼きのこと。小中高生から高齢者まで、老若男女に人気のおやつだ。焼き上がるのを待つ間、お客さんの足もとにすり寄っていくなどして人気なのが、メインクーンの「空(くう)」(メス 10歳)。店主で飼い主の宮崎紀昭さん、美穂子さんには、21歳で亡くなった先代の愛猫「ナナ」がいた。空は、ナナと入れ替わるように夫婦の元へとやってきた。美穂子さんに話を聞いた。
美穂子さん 空ちゃんと出会ったのは2010年12月。その2カ月前、我が家でずっと可愛がっていたナナちゃん(メス 享年21歳)を亡くしたばかりでした。久留米市で保護猫活動をされている知人から、「悲しんでばかりいないで、かわいい子を保護しているから、一度会いにこない?」と言われ、主人と一緒に伺ったんですよ。
そのとき空は、生後半年すぎくらい。モフモフで身体が大きいというのが第一印象でした。迷い猫だったそうで、保護された方が避妊手術を済ませてくれていました。警戒心がなく人なつこくて(笑)。主人も「この出会いを大切にしたい」とのことで、譲り受けることにしました。
亡くなったナナは、主人の実家(現在店がある場所)で飼っていた子。私たちがそこに住むようになった当初、ナナは私のふくらはぎをガブっと噛みついてきたりして、警戒心の強い子でした。でも、あるとき病気をし、私が介抱してから命の恩人と思ったのか、急に心を許してくれて、私にべったりになったんです。これには主人の父(義父の治郎さん 享年83歳)も、ナナの変わりように驚いていました。以来、夜は私の布団にもぐりこんできて、冬は湯たんぽがわりでした(笑)。
私は元々、犬派だったんです。小さいころから猫はシャーっというし、怖いイメージしかなかったんですが、ナナに出会ってから、猫ってこんなにかわいいんだと、逆に大好きになりました。義父は厳格な人でしたが、ナナと私にはとても優しくて、魚を食べたあとの頭や骨をよく与えていました。ナナも義父が大好きで、義父が亡くなったときは、亡骸からしばらく離れなかったです。
そんなナナは2010年10月、老衰で亡くなりました。いろんな病気と闘いながら、病院の先生が驚くほど長生きしました。私も主人も心にポッカリと穴があき、しばらく経ったころ、ナナと入れ替わるようにやってきたのが空でした。動物病院の先生いわく、「猫種はメインクーンだろう」とのこと。狩りが好きで、店の前の草むらで蛇と格闘したり、鳥を捕まえてきたり。小さいころから自由きままでお転婆な子です。
いなほ焼きは、長崎県大村市で誕生したお好み焼き風の回転焼きです。こだわりの生地にたっぷりのキャベツが入り、タコ、天かす、ソースやマヨネーズを絡めた、気軽にいつでも食べられるカロリー控えめなおやつです。
空はいなほ焼きを食べている子どもらの足もとへ寄っていったり、撫でてもらったりするのが好きで、次第に生徒たちや近所の人たちのアイドルになりました。私が銀行や買い物へ行くため店を離れようとすると付いてこようとします。私や主人の行動をいつも遠目に観察していて、常に私たちのそばにいたい、という感じの子です。
ナナが亡くなって4年が経ち、私がいなほ焼きを作っていたときのこと。鉄板に生地を敷き、その中にソースをぐるぐると落とし入れるんですが、突然、猫のシルエットが浮かびあがったんですよ(写真参照)。びっくりして、主人に、わーっ、ちょっと見てと。長年やっていますが、そんなふうにソースが何かの形になることなんてまずないんです。あとにも先にも一度きり。直感ですぐにわかりました。「ナナちゃんだ」って。というのも、その日はナナの命日だったから。見えないけど、いつも私たちを見守ってくれてるんですよね。
空ちゃんと一緒に暮らしてもう10年。私たちの間には子どもがいないので、空はいま、娘のような存在。とても愛おしいです。この子がいるから、困難なことや嫌なことがあっても、前を向いて頑張ろうって思えます。ナナはきっとこう思っているんじゃないかしら。「私はじいちゃん(義父)と天国で一緒だから安心してね。空ちゃん、父ちゃん母ちゃん(宮崎さん夫婦)とお店をこれからもよろしく頼むね」って。
【店名】「いなほ焼き JR筑前深江駅前店」
【住所】福岡県糸島市二丈深江1058-3
【電話番号】092-325-0018
(まいどなニュース特約・西松 宏)