「象が踏んでも壊れない」昭和の名CМがメガネで復活!…筆入世代ではない30代スタッフが発案

 「昭和元禄」と称された1960年代後半にお茶の間を席巻したテレビCMの1つとして「象が踏んでも壊れない」のキャッチフレーズで知られるサンスター文具「アーム筆入」がある。発売から55年、CM放映開始から53年の今夏、メガネの新ブランドにも「象が踏んでも…」とコラボした新CMが誕生した。その経緯や思いを担当者に聞いた。

 アイウェアの製造販売を世界12か国・地域で手掛けるOWNDAYS(オンデーズ、本社・那覇市)が7月に発売した形状記憶メガネの新ブランド「メモリーメタル」。「アーム筆入」とのコラボで実現した新CM「象が踏んでも壊れない。メモリーメタル眼鏡」がWEB公開され、テレビCMは沖縄で放映されている。

 「象が踏んでも壊れない」というコピーと共に、実際に象が筆入を踏む映像で子どもたちに衝撃を与えたCMは67年から放映開始。70年代前半にCMを見た記者は、小学校の教室で筆入の耐久性実験が日常的に行われる光景も目撃した。

 普通に踏むだけでは壊れないので、机の上からジャンプして床に置いた筆入に飛び降りるダイビング・フットスタンプ攻撃や、校舎の4階から地上に落とすなど、もはや「筆入れ」としての本来の実用性はどこへやら、「壊すべき標的」として、昭和40年代を生きた男子小学生の攻撃本能を喚起させてしまった感もあるのだが、その責め苦に耐え抜いた頑丈さに間違いはなかった。

 そんな筆入とメガネがコラボするという。アイデアのきっかけは?「象CM」をリアルタイムで知る50代以上のスタッフによる発想なのか?オンデーズの広報担当に聞いた。

 「製品特性である『形状記憶』を指す『Memory』には、『思い出』という意味合いもあり、昔懐かしいCMを起用したいと考えていました。発案は、30代の男性スタッフからです。わかりやすいキャッチコピーで、懐かしCMを検討した際にサンスター文具さんの『アーム筆入』のCMが上がりました。1965年に販売を開始し、今年で55年という節目の年を迎えた今も、丈夫で長持ちする商品として愛されている『アーム筆入』のように、『Memory Metal』もお客様に長く愛用頂きたいという想いがあります」

 昭和のCM映像もユーチューブで観られる時代。当時、生まれていなかった世代の琴線に触れたという点でいえば、「象CM」には時代を超えた訴求力があるということが言える。

 サンスター文具の広報担当は「あの時代は、お気に入りの筆入が落として壊れることも多々あったようです。時代的にすぐに新しいものを買うよりは直す時代だったため、『丈夫さ、耐久性』ニーズがあったところに、象が踏んでも壊れないというインパクトあるキャッチコピーが、消費者ニーズにダイレクトに伝わり、壊れない筆入は驚きと衝撃があったのだと思います。常識をアイデアで打破して成功したアーム筆入は、まさに弊社のお手本のような存在です」と指摘する。

 併せて、昨今の筆入れ事情の変化も聞いたところ、同社の担当者は「現在の新入学用の筆入は、本体一体型の両面マチック(筆入)が主流で、アーム筆入のようなかぶせスタイルは少なくなっています。好まれる傾向としては、『たくさん入るが軽くてコンパクト、丈夫か、デザイン(色)』が重要な選択肢です」と付け加えた。

 メガネに話を戻そう。そもそも、実際に踏んで壊してしまうような事例は多いのだろうか。筆入れと同様、基本的に机や棚など高いところに置いているイメージだが…。

 オンデーズの担当者は「メモリーメタル発売以前からとなりますが、ご持参のメガネを昼寝の際に床やソファに置きっぱなしにしてしまい、踏んでしまったという理由でメガネを買い替えにいらっしゃる、または保証をご利用いただくお客様はしばしばいらっしゃいます。また、お子様がメガネをおもちゃ代わりにして遊んでしまい、壊れてしまったという例も度々発生しており、形状記憶の特性はこのようなトラブルを回避することができます」と説明。「象が踏む加圧を約1・5トンと仮定した加圧試験をクリアしています」と付け加えた。CMの反響については「小さいお子様を抱っこしていると、メガネを取って落とされてしまうので、その丈夫さが気になるといった声がネットにあがっていました」という。

 かつての筆入のように、メガネをわざと踏んだり落としたりするケースは今のところ報告されていない…と祈りたい。

(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)

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