「この子がいなければ、生きていられなかったかもしれない」…心の病抱えた里親に『生きる力』をくれた子猫
静岡県に住む鈴木さんは、心の病を患って入院していた。退院して間もない頃、妹が「猫を飼ってくれないか」と1匹の子猫を突然持ってきた。まだ4時間おきにミルクを与えなければならなかったが、不思議と猫の世話をするのは苦にならなかった。子猫は、鈴木さんの生きがいになった。
■物置に閉じ込められて鳴いていた子猫
2017年5月28日、静岡県に住む鈴木さんの甥っこは、脳しゅようの治療のため入院していた病院から1日だけ外泊許可が出て自宅に帰ってくつろいでいた。しとしと雨が降っている日だった。どこかから猫の鳴き声が聞こえてきて、なかなか鳴きやまない。母親と一緒に猫を探すと、隣家の庭の物置に声の主はいるようだった。
隣人に頼んで中に入れてもらい物置の扉を開けると、やはり1匹の子猫がいた。近くの公園で暮らしていた母猫が出産したのだが、子猫が間違って物置に入ってしまった。まさか子猫が入っていると思わないご主人が扉を閉めてしまったため、助けを求めて鳴いていたという。
甥っ子は、また病院に戻らなければならず、鈴木さんの妹でもある母親は看病で忙しい。
まだ生後1カ月にもならない小さな子猫は、4時間おきにミルクを与えなければならないので、とても面倒をみられなかった。
■突然、「猫を飼ってくれないか」と頼まれて
「翌朝、妹が子猫を持ってきて、飼ってくれないかと言われたんです。突然のことでぽかんとしてしまいました(笑)。でも、私が飼うことにしました。当時、私は心の病を抱えていたのですが、不思議と4時間おきにミルクを与えるのは苦になりませんでした」
名前はほたるちゃんにした。
当時、鈴木さんはうんぴょうくんという16歳の猫を飼っていた。うんぴょうくんは、ほたるちゃんのグルーミングをしたり、ちょこまか動くほたるちゃんのことを見守ったりした。
鈴木さんは、ほたるちゃんに助けられたと思っている。
「ほたるが一生懸命がんばって生きている姿を見て、私も生きようと思ったんです」
■ほたるがいなければ生きていなかったかも
ほたるちゃんは1歳くらいの時ベランダに出てしまい、隣の家に落ちたことがある。ドサッという音がして、ギャーっという叫び声が聞こえた。慌ててほたるちゃんを探すと、隣家の敷地に落ちていた。
弟が獣医師なので診察してもらうと、内臓はダメージを受けていなかったが、ろっ骨を1本骨折していた。鈴木さんは震えが止まらなかったという。しばらく安静にしていたら大丈夫だと言われ、ほたるちゃんも自分の体調が分かるのか、あまり動かずじっとしていた。今ではすっかり元気になった。
「ほたるはすごく優しいい子なんです。私がつらくて寝ていたり、泣いていたりすると、いつもと様子が違うのが分かるようで、そばによってきたり、顔をペロペロなめてくれるんです。ほたるには感謝しかありません」
鈴木さんにとってほたるちゃんはかけがえのない存在、唯一無二なんだという。
「ほたるがいなければ、生きていないかもしれません」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)