乱用からドラッグ売人になる若者…コロナ禍で変わる暴力団の資金源、相談受ける夜回り先生・水谷修氏が報告

 コロナ禍に伴い、ドラッグにはまるだけでなく、自身の購入資金を稼ぐため売人になる10-20代の若者が増えているという。実際に薬物関連の相談を受けている「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏が、暴力団の資金源がコロナ禍で変化したという背景も含め、その実態を報告する。

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 今年3月以降、ドラッグ、特に大麻と覚せい剤を乱用する若者たちからの相談が増え続けています。大学生や20代前半の若者たちからの相談が中心ですが、高校生からの相談も増えています。

 みなさんは、暴力団の資金源をご存じですか。暴力団の主な資金源は、かつては、総会屋などの企業暴力、地上げ、交通事故示談介入や風俗店、飲食店などへのみかじめ料などの民事介入暴力、そして、闇賭博が中心でした。しかし、「暴力団対策法」などの法規制により、そのほとんどが厳しく取り締まりを受けました。その結果、現在では、「オレオレ詐欺」などの高齢者を狙った詐欺や、売春、ドラッグの密売が、大きな資金源となっています。

 ところが、新型コロナウィルスの感染拡大の中で、家族の連絡が密になったり、高齢者が外出しにくいことから、「オレオレ詐欺」が急速に減りました。また、売春についても、まさに「三密」の行為ですから、急激に客が減りました。その結果、暴力団は、現在、ドラックの密売を資金源として拡げています。そして、十代、二十代の若いドラッグ乱用者を売人として仕立て、仲間や周辺の若者たちへと、密売を繰り広げています。

 若者たちも、なかなか外出できない中で、興味本位で、ネットで情報を集め、売人から、大麻や覚せい剤を手に入れ、乱用し、その結果、幻覚や幻聴、被害妄想などで苦しみ、私に相談してくる。こんなケースが増えています。

 「若者たちのドラッグ乱用は感染症」、私たち専門家は、こう考えています。若者たちは、集団で行動します。その1人が、あるドラッグを乱用し始めれば、数週間で、その仲間たちのほとんどが乱用するようになるという意味です。東海地方のある町では、1人の高校生が大麻をネットで手に入れて乱用し、その彼が、今度は売人として、同じ高校の仲間数人に乱用を広めました。まさに、今その高校生たちの問題の解決に取り組んでいます。

 かつて、1990年代中盤に、爆発的に若者たちの間に覚せい剤の乱用が拡がりました。その原因は「オウム真理教事件」によって、全国の多くの警察官が、その対応に追われ、ドラッグの取り締まりが手薄になり、その隙に、暴力団が、外国人の売人を使って街頭で若者たちにドラッグの密売を繰り返したことが主な原因とされています。

 まさに、今、警察や厚生労働省麻薬取締官による徹底的な取り締まりの強化と、中学、高校、大学での、きちんとしたドラッグについての教育をしていかないと、かつての二の舞になり、多くの若者たちが、ドラッグの魔の手に捉えられ、彼らの明日を失ってしまう。そんな危惧をしています。

 ドラッグの乱用は、この国の存立と国民の安全に関わる大きな問題です。各関係機関の早急な体制の立て直しを熱望します。

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