「家系ラーメン 豚骨しょう油」しつこくない「朝ラー」の秘訣は豚と鶏の比率 ラーメン刑事が取調
元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は年間500杯以上も平らげるラーメン通としても知られ、静岡朝日テレビの「とびっきり!しずおか土曜版」では「ラーメン刑事」のコーナーを持ち、番組でラーメン店を訪れ店主を取り調べ、美味いラーメンの秘密を探る。英国航空や中華航空など国際線5社の機内映像では自身の食レポ「ラーメン刑事」が放映されている。小川氏が当サイトにお勧めのラーメン店を紹介する。
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今回は横浜で「家系(いえけい)ラーメン」の「朝ラー」をいただきました。「家系ラーメン」といえば、横浜市発祥の豚骨しょう油ベースで全国的にもおなじみになりましたが、都心部では珍しい朝4時オープンの「朝ラー」の店があるということで、さっそく同市保土ヶ谷区の現場に足を運びました。
店名は「どんとこい家」。オーナー店主の飯塚祐太さん(34)は有名店で6年修行し、同区内の別の町でオープンして5年、今の店舗で3年目、キャリア14年目のオーナーです。
店内は7席のカウンターだけ。食べたのは「昼めしセット」。ラーメン、味玉、のり5枚、小ライスで900円(税込)です。朝から家系の豚骨しょう油と思う方も多いと思いますが、意外といけます。豚骨の独特の強い香りはするものの、スープをすすると全くしつこくない。
その秘密に迫りました。当初は「特に何もないですよ!」と笑顔でとぼけていた店主でしたが、「『ラーメン刑事』なんで『はい、そうですか』とはいかないんですよね」と粘ると、「これだけですよ」と前置きし、「うちは、豚6鶏4で出汁を取っています」と明かしてくれました。通常の家系だと、「豚8鶏肉2」のところが多いので、その比率がポイントなのです。
飯塚さんは「こだわらないことがこだわり!」と言います。特に有名な豚やブランド鶏を使っているわけではありません。「1000円以内で満腹になってもらいたいと思っています。1000円の『満腹セット』だと、トッピングの価格だけで1300円相当になります」と、高価な食材を使い、こだわることを否定はしません。「リーズナブルな値段で満腹になってもらいたい」という思いが強いとのこと。「こだわらない」と言いながら、随所に“こだわり”が見えました。この「満腹セット」は朝4時からやっていますが、夜勤帰りの方、これから出勤する方にも好評のようです。
きれいなピンク色をしたチャーシューは、一見、低温調理の様に見えますが、食べるとスモークの香りと味がします。店主にチャーシューの作り方を聞くと、「スープで話したじゃないですか?これもですか?」と笑顔を浮かべながら、「ちょっとだけ教えますね。スモークと言えばスモークなんですが、香りが付くチップは使いません。焼いた時に落ちるロースの脂でいぶされています。ロースも、一般的に脂の多い肩ロースではなく、脂身の少ないロースの部位を使っています。
スープは『呼び戻し』という手法で、お店が創業した当時から継ぎ足して作られるタイプです」とのことです。
他にも、こだわりは見られ、麺をゆがく際にテボ(麺を湯切りする道具)を使っているが、普通の菜箸ではなく、ビックリするぐらい太い棒のようなものを使っていました。天ぷら用の箸らしいですが、「この方が麺に傷をつけないし、手にダイレクトに感触が伝わるので、一番合っています。」とのこと。
店名は修行2年目に決めていました。「ラーメン屋をやるときは『どんとこい家』にしようと。まさに『どんとこい』という思いで決めました」。麺は中太四角に近い平打ち麺。「これも試行錯誤しながら、製麺所さんと考え、スープの持ち上がりが一番良い、四角に近い平打ち麺にしました」
女性客が多いのも特徴です。取材に行った際、店から出てきた男女のカップルに話を聞くと、男性は 「最近、美味くなったんですよ。以前から来てましたが、より美味くなりました」、女性は 「ラーメン大好きなんです。でも家系はちょっと苦手…なんですが、ここの家系は美味しくてよく来ます」とのことでした。
まだまだ、進化していきます。「日々勉強しています」と謙虚なオーナーですが、取り調べ中、時々、その笑顔は職人気質でマジな目になっていました。
【取調メモ】
店名 「どんとこい家」
所在地 横浜市保土ヶ谷区和田町1-11-25
最寄駅 相鉄線・和田町駅(徒歩5分)
定休日 年中無休
営業時間 朝4時~午後3時
スープ 豚骨しょう油
麺 中太で四角に近い平打ち、もちもち食感の短尺麺