小さな紙片を何枚も貼って仕上げた絵がスゴすぎる!…油絵かと思うほどの繊細さ、個展で異色画家に聞いた

 絵具を使わない異色の画家、深町めいしゅうさんの個展「百万ピースの存在~A million pieces of reality~」が25日から大阪・福島区の「ラッズギャラリー」で始まった。9月6日(8月31日休館)まで。細かく切った色紙のみで風景や人物などを描いた作品が並び、来館者を驚かせている。年内の展示はこれが最後。感動間違いなしだ。

 その迫力と熱量に圧倒された。絵に近づくと、その繊細さに思わず、うなってしまった。一瞬、油絵かと思うほどの立体感。光の角度によって、色が変化していく。

 深町さんのスタイルは「Paper Painter」と呼ばれるジャンルで絵具の代わりに95色の色紙をカッターと定規を使って切り、ピンセットで貼っていく独特の手法。5センチ四方だけで何千枚というピースを費やしているという。

 「一片の色紙が数10万枚集まって、1枚の絵になる。ぼくはこの不思議さに魅了されました。その独自の質感は絵の表情に奥行きを与える。いい表情を出すためならぼくは何万枚でも貼ります。そのときのベストと思えたときが絵のゴール。下書きはしないし、描き直したりすることもない」

 1953年福岡で生まれ、北海道釧路市で育った。ファッション業界ではデザイン、販売にも従事し、2007年に54歳で、この世界に入るという異色のキャリアの持ち主でもある。

 「親父は画家でしたが、ぼくは絵描きになろうなんて全く思っていなかった。それが46歳のとき、友人のグラフィックデザイナーが描いた貼り絵をみたとき、格好いいなと思った。自分でやってみるのもいいかな、と。きっかけと言えば、それですかね」

 今回、展示されている作品は22点。初期のポップ調の作品から最新のものまでが並べられており、現時点での「ベスト」と自負する。大作になると完成まで1年半。量産できないのも当然か。一般人には気が遠くなるような、それほど繊細で根気のいる作業ということだ。

 「このシーンを紙を切って貼ったらどう見えるだろうかと思うのがエネルギーの源かな。切って貼るのは毎日1日10時間から14時間。継続することをぼくは厭わない。それがぼくの特徴でしょうね。切るのは作業。やっぱり貼るのが楽しいね」

 展示されている作品はどれもこれも魅力的だ。たとえば、ブラジルのスラム街を描いた「ファヴェーラ」については「真ん中に少年を描きました。太陽の下ではみんな平等というのを表現したかった」と話す。

 最新作のろうそくは孤高の画家、高島野十郎を思い出させてくれるような存在感。「私も高島さんは大好きでした」と言う。また深町さんが好んでモチーフに使うひまわりを描いた「夜のひまわり」は初公開の作品でもあり、月の光が何とも色鮮やかだ。母を描いた「マザー」はレースの服の質感にも注目したいところ。その他、現在住んでいる新潟の風景を描いた「田園」「夕陽」も味わい深い作品だった。

 ギャラリーの兵野豊子オーナーは「驚きの連続。このような絵は初めて見ました。みなさんも、ぜひご来館ください」と話している。

(まいどなニュース特約・山本 智行)

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