江戸時代にもカットスイカが存在した! 浮世絵を通して再発見する日本のスイカの食べ方
手を汚さずにスイカの美味しさをダイレクトに味わえることで近年人気急上昇中のカットスイカ。
そんなカットスイカがすでに江戸時代に存在したという事実がSNS上で話題になっている。きっかけは東京都の太田記念美術館がTwitterに投稿した浮世絵の画像。
「江戸時代、すでにカットスイカはあったようです。染付の大きなお皿に、カットされたスイカが山のように積まれていて美味しそうです。ちゃんと楊枝も刺さっています。(現在、作品は展示しておりません。)」(太田記念美術館のツイート)
うちわを持った女性の横に盛られ、ご丁寧に爪楊枝まで刺さっている真っ赤なカットスイカ……現代と変わることない日本の夏の光景にTwitter上では
「江戸時代にも カットスイカがあったなんて(*´艸`)」
「江戸時代の人と同じスタイルでスイカを食べている私」
「浮世絵もこのように見ると楽しいですね。美術は噛めば噛むほど味が出ます。」
など数々の感動の声が巻き起こっているわけだ。江戸時代の人々にとってカットスイカはどれくらい身近な存在だったのだろうか?この浮世絵をTwitter上に投稿した太田記念美術館の日野原(ひのはら)さんにお話をうかがった。
中将タカノリ(以下「中将」):大反響のカットスイカ浮世絵のツイートですが、どのようなきっかけで投稿されたのでしょうか?
日野原:お陰さまで約8年間の太田記念美術館のツイートの中で、歴代1位の「いいね」数をいただいております。
このツイートは、たまたま「マツコの知らない世界」(TBS)の「スイカの世界」という特集(8月18日放送)を観て「最近のスイカはカットした状態で販売されていることが多い」ことを知り、「当館で所蔵する浮世絵にもカットスイカが描かれていたよな」と思い出して投稿したものです。
中将:これはどのような作品でしょうか?
日野原:安政元年(1854)に制作された歌川国貞(三代歌川豊国)の「十二月ノ内 水無月 土用干」という作品です。
スイカをメインに描いたのではなく、7月下旬から8月上旬の夏の土用に行なわれる、着物の虫干しの様子を題材にしたものです。
中将:江戸時代にもカットスイカがあったとは驚きです。スイカはいろんな食べ方がありますが、江戸時代はカットスイカにするのがメジャーだったのでしょうか?
日野原:どれくらいメジャーだったかはわかりませんが、別にみんながカットスイカにしていたわけではないと思います。たとえば歌川広重の「東都名所高輪廿六夜待遊興之図」には「二十六夜待ち」という年中行事でたくさんの屋台が並んでいる光景が描かれているのですが、その中に出てくるスイカは半月状にカットされています。
歌川広景の「江戸名所道化尽 十九 大橋の三ツ股」にもスイカ売りの舟が描かれていますが、こちらも半月状にカットされていますね。
また、当館が所蔵していないため画像はご提供できないのですが、歌川国芳の「五行之内 西瓜の水性」や「名酒揃」という団扇絵では女性が扇型のスイカを食べています。江戸時代の人も今と同じように、シチュエーションにあわせていろんなスタイルでスイカを楽しんでいたのだと思います。
【太田記念美術館】
所在地:東京都渋谷区神宮前1-10-10
※R山手線・原宿駅表参道口より徒歩5分、東京メトロ千代田線、副都心線・明治神宮前駅5番出口より徒歩3分
開館時間:10時30分~17時30分(入館は午後17時まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)、年末年始、その他
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江戸時代の人々も、夏になれば我々と同じようにいろんなスイカの楽しみ方を模索していたようだ。浮世絵を通して再発見できる日本の変わらぬ風俗や情緒……。僕にとってもなんとも愉しい体験だった。
なお現在、太田記念美術館では幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師、月岡芳年の「月岡芳年 血と妖艶」を開催中。「血」、「妖艶」、「闇」という3つのキーワードを通し、特徴的な"血みどろ絵"や美人画など芳年の魅力の神髄に迫るという内容だ。ご興味のある方はぜひ訪れていただきたい。
【月岡芳年 血と妖艶】
期間:2020年8月1日(土)~10月4日(日)
前期:8月1日(土)~8月30日(日)
後期:9月4日(金)~10月4日(日)
※前後期で全点展示替え
※定休日等休館日あり
開館時間:10時30分~17時30分(入館17時まで)
入館料:一般800円、大高生600円、中学生以下無料
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)